講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
銭湯併用住宅を建てる−神水公衆浴場

黒岩裕樹さん
黒岩構造設計事ム所代表。2020年に自宅に併設した銭湯を開業。一般公衆浴場の新規開業は、熊本県ではほぼ20年ぶりとなる。



1. 熊本地震の被災
2. 神水公衆浴場の開業
3. 震災後の資材高騰
4. 今日の銭湯事情
5. 利用者の声
6. まとめ



1. アメリカでのホームステイ
松村:  今や絶滅危惧種と言われたりするのを耳にしますが、、黒岩さんはわざわざ銭湯付きの自宅を建てた方です。建築家の西村浩さんが、その狙いを「住宅特集2020年9月号」に解説していますが、施主のお話を直接伺いたいと思ってやってきました。熊本で構造設計事務所を営む黒岩さんが、何故、銭湯を作ったのでしょうか?
黒岩:  自宅の分譲マンションが大規模半壊になったことが始まりです。すぐ近くの7階建てマンションに住んでいましたが、2016年の熊本地震で4階部分が大きく壊れてしまった。急遽、家探しに迫られまして、新しい家を作るなら災害時に地域の拠り所になるものにしたいと考えたんです。
松村:  熊本地震がきっかけとのことですが、当時はどのような状態でしたか?
黒岩:  ガスや電気が止まり、2〜3か月ほどは自宅の風呂に入れませんでした。この近くで入浴できるのは健康ランドくらいでしたが、地震直後はごった返し状態で、洗い場の排水が追いつかないほどでした。九州には地震が来ないとみんなが高を括っていたんでしょう。
  大きな被害を受けた益城町なども、被災者対応が遅れがちでした。仮設住宅が行き渡ったのが1年後で、復興住宅が姿を現したのは2年後くらいです。益城町は熊本市のベッドタウンですが、復旧を待ちきれない人たちが市内に移り住んできました。この神水(くわみず)近辺にも結構引っ越してきて、被災したオフィスや店舗がどんどん住宅に建替わりました。急にベッドタウン化したというか、夜がひっそりした街に変わっていく様子を目にして、少しでも盛り上げたいという気持ちが湧いてきたんだと思います。神水は僕が生まれ育った地元ですから。



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