講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


8. 活動を通して自分を見る
松村:  行為の意味はだいぶ違いますが、文化財の解体修理に似ているところもあります。例えば法隆寺のような伝統的な木造建築の場合、50年から100年に1 回は完全に解体するような修理をしていて、その時に昔の大工がやったことを発見していきます。生きた時代が異なるプロ同士が痕跡を通じて語り合っていて、部分的にはその作業近いと思います。
鈴木:  端から見ると建物の修理ですが、こんなにも多くの気づきがあるものなんですね。そうした気づきを自覚することによって、単なる建物修理がアートの行為になっているところが本当にすごいと思います。
松村:  建築的に見ると国宝でもないし、お金をかけた建物でもない。すごく普通の建物です。その建物でこれだけ遊べるというのが驚きです。工場で起きたかつての出来事や、そのことに対する山アさんの思い、そういう全てがこの活動を成立させているのでしょう。山アさんの説明を伺うのはこれで三度目ですが、ご自身のお考えがどんどん深まっているという印象を受けました。
西村:  アート作品は「私」を表すので、山アさんにとっての「私」の立ち位置が明確になってきているのではないでしょうか。制作活動とは「私」を見ていく行為です。僕はyamajiorimono*works という活動を通して「私」自身を確かめているわけですが、山アさんを鏡にして確かめているような感じがあります。もしかしたら山アさんは、僕を通してご自身を見ているのかもしれません。
松村:  建築関係者の動機とは全く違いますよね。基本的に建築の仕事は、お施主さんなどの他人のためにやっていて、自分を見つめ直すためや、自分を発見するためにやっているわけではない。少なくとも建前上はそうです。だから、このyamajiorimono*worksで感じるような事柄を、通常の建築の仕事から感じることはできません。それが非常に興味深いところです。
山ア:  ここで色々なことが試みられているということは実感していますし、私自身も試みの一つなのだろうなと思って納得している部分もあります。



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