講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4. 整経場を分解する/空をひらく、漆喰を塗る/記憶を呼び覚ます
西村:  話は少し前後しますが、2007年の冬からは整経場(織物の経糸を準備する作業場)の分解に取りかかっています。通常であれば外から壊しますが、蚕が繭の外に出ていくように内側から部材を外しました。瓦屋根を1 枚1 枚内側から取り外して、徐々に光を地面に入れていく感じです。
石井:  整経場は一番古い建物でとても傷んでいたんです。20cm 程下がっている部分もあったりしました。
山ア:  明治後期に建った部分です。創業当時は曽祖母がここで養蚕をしていたと聞いています。
松村:  だから蚕が繭の外に出ていくように解体したわけですね。
西村:  空が見たいというイメージで作業していました。2009年からは残った建物に壁を入れ、漆喰塗りをしています。古い漆喰を剥がして塗り直したんですが、何度塗り込めても機械油が染み出てくる。最初は「これはどういうことなのだろう」と考えながら左官をしていましたが、土壁の中の小舞に油が染み込んでいたんですね。この時は、建物を新たな状態にすることによって、その記憶を呼び覚ますという行為につながっていったと思います。




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