講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.街を官能検査で評価する
島原:  センシュアス・シティ調査は、評価軸を「関係性」と「身体性」の二つに絞っています。これなら年齢や性別に依存しないと考えたからです。「関係性」は、見ず知らずの他人が集まった場所で、いかに心地よく暮らせるかどうかを捉えるための評価軸で、「共同体に帰属している」「匿名性がある」「ロマンスがある」「機会がある」という四つの指標を設けています。もう一つの「身体性」は、都市を経験するのはあくまで身体であるという考え方に基づく評価軸です。こちらは「食文化が豊かなこと」「街を感じられること」「自然を感じること」「歩けること」という指標を設けています。僕たちの生活にはインターネットを使ったショッピングやコミュニケーションが浸透していますが、いくら技術が発達してもこうした基本的な身体的経験はネットに置き換えられないと思うんです。

最終的には、これら八つの指標に対応する典型的な活動(アクティビティ)を、それぞれ四つずつ設け、日常生活のシーンをリアルに切り出すような言葉で経験頻度を聞きました。例えば「不倫のデートとした」という項目もありますが、これは「匿名性がある」ことを測る究極のアクティビティとして設定したものです。
鈴木:  都市生活だからこそ可能になる活動を聞いていったわけですね(笑い)。そういった意味では、かつてジェイン・ジェイコブズが『アメリカ大都市の死と生』で着目した内容に通じる調査です。
島原:  自治体の都市計画の担当者や民間の都市プランナーは、学生時代にジェイコブズのことを習っていますし、その考え方に共感している人も少なくありません。だけど、実際の仕事ではそれとは真逆のことをしているように感じています。
ちなみに、街をアクティビティで捉えるという着想は、都市計画家のヤン・ゲールから得ています。調査の設計段階では60項目以上をリストアップしましたが、予備調査と統計処理を通して、各指標に対する説明力や項目動詞の意味の重複などを検証して、最終的に32項目に絞りこみました。



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