講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2.社員大工による地域のリフォーム
2.社員大工の育成
松村:  大工を社員にするのは難しいと、一般的には言われていますが。
湯前:  マスコミが作った宮大工のイメージを持っていたりするので、想像していた仕事と違うと言って辞めていくこともあります。でもそこは腹をくくっておけばいいんです。それならチャレンジしてごらん。いつでも帰って来ていいからって送り出すことにしています。
鈴木:  採用というのは町場の大工さんをスカウトなさるのでしょうか。
湯前:  採用対象は鹿児島にある大工養成学校の新卒のみです。ここは1学年40人の2年制の学校です。以前は1年制だったのですが、2年制になってから入社後の定着率も良くなりました。と言うのも専門学校に入ってくる子は、たいていは偏差値教育の落ちこぼれなんです。大工に向いてなくても1年間だと何とか辛抱できるでしょうが、2年間となればそうはいかない。それと全寮制ですので先輩の様子を見られるようになったことも良かったようです。彼らは2年間で現場の流れと道具の使い方は学んできます。もっとも当社では90%はプレカット材ですから、入社後に棟梁とマンツーマンでうちなりのやり方を覚えさせています。
松村:  大工の供給源がうまい具合にあったのは良かったですね。ちなみに養成学校に女子はいないのですか。
湯前:  もちろん女子学生もいますが、リフォームは力仕事が多いので体力的に厳しいと思います。実は大工の技術学校はたくさんあって就職先に困っているんです。鹿児島の養成学校と縁ができたのは、乾燥材を探して各地の森林組合を回ったことがきっかけです。鹿児島産の乾燥木材を使い始めたときに、養成学校もありますから人材も連れて行ってくださいと頼まれたんです。

当社では大工にCADで図面も引かせますし、エクセルで工程表や見積もりも作らせます。高度成長期には分業が進みましたが、今のような低成長時代には、何でもできる人材を育成しなければと思っています。そういう意味で、「大工」に代わる呼び名はないかと考えているところです。
松村:  もともと「大工」は多能工として活躍できる能力を持っているのですが、世間のイメージは違っているかもしれないですね。「大工」や「工務店」に代わる名前があるといいのですが。
西田:  では、電気工事や水道工事もなさるのでしょうか。
湯前:  全部やりますよ。最後のチェックはプロに任せますが、配線工事ができるように勉強はさせています。本当は資格も取らせたいのですが、まだその段階までは行っていないですね。
松村:  若い大工さんが多いようですが、平均年齢はどれくらいでしょう。
湯前:  全体では20歳くらい、棟梁を任せている人間は25歳くらいが平均だと思います。木造業界に入って来たときに、これは大変だと感じました。大工のほとんどが50~60代ですからね。きっと当社の若い大工はあと20~30年もすれば自分たちの時代が来ると分かっていると思いますよ。これから新築住宅に手が出ない所得層が増えてきます。ハウスメーカーの技術ではリフォームはできませんから、ここの大工の技術が必要とされます。リフォーム技術を持っている彼らは、やりたい仕事だけ選べるようになるはずです。



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