講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.運営業者のノウハウとは?
松村:  かなり面白いことになってきているね。
鈴木:  不動産って賃貸でも何かと「重い」じゃないですか。でも、ゲストハウスでは本来の身軽な賃貸が成立している。よい賃貸の仕組みが無いから、都心居住がなかなか進まないと専門家達が言っている間に、現実があっさりと越えてしまった感じですよね。
北川:  事業としても軽いから成り立つ様々な面白さがありますね。冒険しても許されるマーケットなんです。供給側にしても入居側にしても一般賃貸では二の足を踏むような試みがゲストハウスでは成り立つ。嫌なら出ればいいわけですから。ネット集客なので目立った者勝ちみたいなところもあって、むしろ冒険した方がいい。
鈴木:  でも、押さえるべきポイントはありますよね。
北川:  設備的なことを言いだすときりがありませんが、端的に言えば水回りとリビングですかね。
松村:  リビングはないとダメなんだ?
北川:  なくても私どものサイトに掲載はできますが、あった方がコミュニティ形成は楽ですね。
鈴木:  管理も重要だと思いますが、どうなっていますか?
北川:  業者さんは色々な管理方法を試みています。失敗例もありますが、担当者が週1回ほどやってきてシェア部分を掃除するのが一番安定するパターンですね。中には週2〜3回の頻度の事業者さんもいます。複数の物件を抱えるようになると、エリア単位に担当を置いて巡回と内覧を任せるスタイルになっていきますね。郊外の大型物件しかやらない事業者さんになると、寮のように管理人を教育して派遣するケースも多いです。
鈴木:  文書化された生活ルールなどはあるんですか?もっとも、そうしたものは不要なのかもしれませんが…。
北川:  必要ですね。規約類の作り方は業者さんによって様々ですが、当社一押しの方法は、業者側が全部のルールをハンドリングすることです。居住者の生活が最も安定しますし、トラブルが減ります。ですから、住んでいる方々の声を吸い上げながら妥当なルールを作り上げるノウハウの蓄積が、運営業者さんの実力になっていきます。
鈴木:  内覧が面接を兼ねるということでしたが、確認するのはオーナーですか?
北川:  運営業者さんが行います。オーナーさんが運営業者を兼ねる場合は別ですが、基本的にオーナーはノータッチです。ゲストハウスは営利目的のシェア住居として成立しています。個人の自助努力でシェア住居を作ろうとしても、様々なリスクがからんでなかなか成立しませんし、器を作れても長期間は運営が続きません。ゲストハウスが成立するのは、運営業者の営利活動がそうしたリスクを肩代わりする仕組みになっているからで、ここが面白い点です。
鈴木:  日本の賃貸のあり方は貧弱だという指摘が昔からあったけど、ちょっと違うスタイルが作られつつあるという感じがしますね。
松村:  携帯電話の出現がかなり大きいんじゃないかな。僕らの一人暮らしの頃にシェア生活をしようとしても、電話が大きなネックになった気がする。
北川:  インターネットも含めて、そうした生活を成立させる要件が社会的に揃っている時代なのかもしれませんね。



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