講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.誰がどこで運営している?
見立:  ゲストハウスの1km2当たりのベッド数を地図上にプロットして1985年からの変化を見ていくと、まず大田区で増えていきます。ここはひつじ不動産に登録されている物件で最も古いゲストハウスである日欧交友企画のティチャーズロッジがあるエリアです。次いで新宿区辺りで増えていきます。現在の東京都内では台東区が最も密度が高いようです。特異的に埼玉県蕨市も高密度エリアになっています。郊外では寮を改装した大型物件が多いのですが、こうしたものが数棟あったのでそうなっています。



松村:  大型物件というと何ベッドくらいあるんですか?
北川:  日本最大規模は約160ベッドになります。この規模が2件あって、その1件が蕨市にあります。元の建物は社員寮でした。予備校の寮の改装もちょくちょくあります。
松村:  その場合、フロア毎にシェア部分が設けられたりするんですか?
北川:  フロア単位のシェアスペースは見ないですね。ゲストハウスではシャワーが重要なんですが、元の大浴場にシャワーブースがばっと立ち並びます。そうでなければ、大浴場の隅にシャワーが付く感じです。さすがに寮の大浴場をそのまま使っている例はないようです。
見立:  既存用途は、戸建住宅が31%を占め、次いで社員寮・学生寮の26%、マンションの18%が続きます。また、一部には既存建物が住居系でないものもあります。

それから再建築不可建物の改修が6%を占めます。接道2m未満の旗竿敷地の建物を改修して利用しているような場合ですね。こうした土地建物は買っても格安ですし、住む人があまり日当たりを気にするわけでもないので、ゲストハウスのベースビルとして好まれるようです。
佐藤:  ゲストハウスの運営業者はどういう業種から生まれているんですか?
見立:  ゲストハウスが外人ハウスとして生まれた1980年代末頃は、来日して住居確保に苦労した経験のある方が自ら始めた例が多かったようです。つまり、運営者自身かその奥さんが外国人というような場合が多かった。当時は、インターネットがなかったので、外国人向けフリーペーパーに広告を出したり原宿でビラを撒いたりと、集客が大変だったとおっしゃっていました。1990年頃にはバブル経済で来日外国人も急増したので、ウェイティングリストができるくらいブームになっていたそうです。

もっとも現在は最近参入した運営業者が多く、運営経験1年未満が半数を超えていて、その平均管理数は50ベッド未満です。しかも、兼業が非常に多くてゲストハウス専門は6%に過ぎません。出身業種は不動産業・賃貸業(家主)が最も多く、ウィークリーマンションや建築設計も見られます。ゲストハウス事業を始めた理由は、当然ながら今後の成長が見込めるとか収益性が高いという回答が多いのですが、国際貢献になる、おもしろそう・楽しそうという回答も結構あります。ヒアリングをしても、社会貢献になるという意識を持って経営していらっしゃる方が多いです。
鈴木:  運営業者と物件との関係はどうなっていますか。賃貸アパートでは建物所有者が大家さんとして経営するスタイルが昔からありますよね。
見立:  外人ハウスの頃はほとんどサブリースだったと思いますし、今でも一括借り上げのサブリースが多いです。ただ、最近は運営業者の所有も増えています。新築も4%と微量ながら存在します。近年はゲストハウスに対する理解も進んで、銀行による融資も受けられるようになったと聞いたので、所有や新築が増えてきている一要因になっていると思います。また、賃貸アパートの大家さんがゲストハウスに衣替えする例も増えています。

ちなみに、平均賃料単価はゲストハウスが4530円/m2です。一方、アパマンなどが公表する成約賃料の平均はアパートが2650円/m2、マンションが3200円/m2になります。



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