講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


11.町家の区別
鈴木:  町家の区別について、丸橋さんのお考えをお聞かせください。
丸橋:  建て替え前の建物は商家でした。商家は長くて、入ると玄関と仕事場があり、さらに内玄関や坪庭があります。裏には土蔵があります。うちにはさらに漬物小屋がありました。つまり、女中さんがいたということです。

このような家の他に、もう少し小さな住むためだけの家があります。今のところこれらを分けて呼ぶ言い方はありません。名称が別々にないと区別がつかないと思いますけどね。

現在、京都で公開されている建物は商家です。よく町家と言って世間一般に言われている物とはイメージが違うのではないでしょうか。長ければ町家というイメージがありますけど、町家といっても種類があるんです。

昔は、この家の前の通りがメインストリートでした。烏丸通はもっと狭かったんです。新町が主に問屋で、この辺りが二次問屋でした。さらに西へいくと、家も小さく、通りも細くなります。その辺りには職人さんが住んでいます。
松村:  今でもそうした住み分け意識はありますか。
丸橋:  お年寄りの間ではあるような気がします。この辺りの方の中には、西よりも自分たちの方が位が高いと思っておられる方も多いです。
松村:  こんなに近く同士でそのような意識があるんですか。
丸橋:  そうですね。他の面でも、京都の町には昔から階級があるんです。例えば、どこのお雛様をもっているかで、昔からのお金持ちか、そうでないか分かってしまう。もちろん、それが分かる人は仕事としてそういうことに詳しい人ですけれど。

もっとも、最近はネットオークションにお雛様の良い出物があったりします。やっぱり良い物は良いので、50年物でもすぐ売れてしまいます。おそらく、買う人はそれが家を計るものさしになっているとは知らないと思いますけどね。
松村:  建物は次第に変わっているかもしれませんが、家系で家業を継いだりするのですか。
丸橋:  烏丸から東では、代は変わっているとは思います。もともとから住んでいる方はもういらっしゃらないのではないでしょうか。主に商売人ですから、失敗して店がつぶれたり、若者が出て行ってしまったりしているかもしれませんし。
松村:  家を取り壊すと商売が変わるという感じはしますか。
丸橋:  そうでもないですね。私たちが建て替えたときも、ガタがきて、メンテナンスが必要になったので建て替えたわけですから。



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