ライフスタイル考現行


5.自宅の半自力建設


鈴木:  ここに来る途中、萩野さんが能登で最初に住んだ家の前を通りましたが、県道の旧道沿いあって周囲に家も建っていました。でもこちらの新しい自宅は三井の集落から1kmは離れた一軒家で、気付くと携帯電話が圏外になっています。お子さんはここから通学しているのですか?
萩野:  約5km近くの距離を自転車で通学しています。もっとも冬は寒く雪が降るので、親が送り迎えすることが多いですね。

最初はどこか古い民家を改修して住めないかと考えて、地元の方にも相談したんです。しかし、空家になっている家でも仏壇も置いてあるし、お盆などには戻ってくるところも多くあります。ある方からは、ご先祖様に申し訳ないから売れませんと言われてしまいました。貸すならまだしも、売るとなると心理的抵抗が大きいんですね。そこでいっそのことと山へ入り、山林だったこの土地を500坪ほど購入して新築することにしたんです。斜面の中腹がなだらかだったので少し整地すれば家を建てられそうでしたから。
鈴木:  何でもこの近くで最後の野生のトキが捕獲されたそうですね。敷地の前面には水田が拡がっているので孤立感は意外とありませんが、どのようにしてこの土地を選んだのですか。
萩野:  もう少し奥まったところも考えたんですが、地元の方からここより先は雪の関係で冬の生活が厳しいと言われてここに落ち着きました。もっともこの地域では土地の売買がほとんどされていなかったため、妥当な価格がよく分からない。結局、道路の拡幅などの時の価格を調べて、契約の際は地元の元校長先生や工務店をやっている名士の方などに取り持ってもらい、ようやく土地を手に入れました。
佐藤:  半自力建設とのことですが…
萩野:  地元の方に協力してもらって木の伐採、抜根、整地から始めました。2004年11月から始めましたが、この作業が大変でした。家の真ん中にある太い柱はそのとき伐採したものです。2006年6月に地鎮祭にこぎ着けてからは工事が順調に進み始めたのですが、その秋に当時借りていた日当たりの悪い家の土間でマムシに噛まれて入院するという得難い経験もしました。


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