ライフスタイル考現行


4.旧駅前の事務所


萩野:  事務所として借りているのは70年ほど前の昭和初期に建てられた住宅です。夏は1階で作業しますが、冬は寒いので2階で作業をしています。
鈴木:  壁にかかっているドローイングが綺麗ですね。
萩野:  ペンシルバニア大学で習ったボザール流のウォッシュという技法を用いた水彩ドローイングです。向こうではクライアントによってはこの方が説得力があるので、今でもこうしたプレゼンテーション技術が生きているんです。
西田:  能登半島地震の際には大丈夫でしたか。
萩野:  本棚が倒れて部屋がめちゃくちゃになりました。今でも襖に大きな傷が残っています。窓もアルミサッシが外れたままですし、未だに被災の跡が所々あります。この建物は半壊と判定されて、家主に取り壊さないか相談されましたが、そのまま使い続けています。その代わり、公的補助で取り壊さなかった分、家賃を値上げされてしまいました。
鈴木:  新しい自宅に設計事務所を移動しないのですか。
萩野:  ここに事務所を開いていることには理由があります。道を挟んだ向かいの建物は、廃線になった能登鉄道の能登三井駅です。一時期、取り壊しの話しが持ち上がりましたが、地元の方の努力によって保存することになりました。しかし能登半島地震でそれどころではなくなり、まだ活用方法の目処が立っていません。できればこの駅の問題を解決してから事務所を移動したい。もっとも新しい家で住めるようになってからは、妻はすかさず仕事場を移してしまいました(笑い)。


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