ライフスタイル考現行


2.フィラデルフィアから能登へ


萩野:  最初の能登での山村生活は2ヶ月ほどでしたが、非常に衝撃的でした。東京との違いは、ある面ではフィラデルフィアより能登の方が大きく感じました。もの珍しさもあったのか、地元の方々が極めて暖かく迎え入れてくれまして、結局、その夏から毎年能登へ行くようになりました。
佐藤:  それで能登に引っ越したわけですか。
萩野:  実はアメリカでの実務経験のチャンスが巡ってきて、2002年から再度フィラデルフィア郊外に行ったんです。二度目のアメリカ生活も充実していましたが、今度は日本を大いに意識しながらの生活になりました。日本とアメリカ、都市と田舎を冷静に受け止め、それぞれの良い面と悪い面を、私なりに考えるようになりました。この時期はアメリカに住みながら東京の小さな住宅の設計プロジェクトも行い、夏には能登へと足をのばしていましたから。

能登に移住することを決意したのは40歳を超えた時です。本当に自分のやりたいことは何なのか自問した結果、どこか日本の田舎の広々としたところに長く落ち着ける場所を半自力でつくっていこう、という結論に達したんです。子供たちにも自然溢れる環境の中で日本の教育を受けさせ、言葉だけでなく日本人としての感覚を身に付けて欲しいという考えもありました。アメリカが反テロという名目で戦争へ向かっていたことも決断を後押ししました。それで家族を無理やり説得して、2004年に能登へ移住しました。

もっとも能登での生活は、期待ほど前途洋洋ではありませんでした。仕事が忙しくて自宅の半自力建設は思いの外スローペースになってしまいましたし、2007年3月には能登半島地震が直撃しましたから。


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