社会経済的大転換に対応した
持続可能な住宅都市デザインを考える
(3) 未来の住宅・都市づくりとは?
1) ヨーロッパ・アメリカでの住宅・都市づくり
最近、海外調査を精力的にやっているので、海外の方々が私達と同じ課題に直面していることと、具体的にどう対応しているのか、何に悩んでいるかについてお話したいと思います。
フィンランドでの調査では、都市計画に長らく携わってこられた、ヘルシンキのシニアプランナーの方にお話を伺いました。彼女が重視しておられたことは、郊外にずっと暮らしてこられた市民の高齢化でした。ヘルシンキにおいても、郊外の住宅地に高齢者がたくさん住んでおられます。森の中に住んでいるような国で、高齢者のケアが非常に大きな問題になっています。それを都市計画でどう対応できるかに、とても悩んでいるとおっしゃっていました。それに加えて、気候変動の緩和と適応や生物多様性の対応も必要とされています。さらに移民を受け入れるという政策になっています。新しい移民を受け入れるような場所をつくっていかなければいけないということと、高齢化対策と気候変動、生物多様性にうまく対応しながら、都市計画として考えていくことが、現在の我々の仕事なのだということでした。
フィンランドはとてもきれいな都市です。しっかりしたマスタープランをつくって、素晴らしい住宅地を計画的につくってきた歴史があります。プランづくりでの市民参加もとてもしっかりしています。ヨーロッパには現在、欧州グリーンディールという制度があって、フィンランドの政策はその影響を大きく受けています。カーボンニュートラルについてとても頑張っていて、排出量を大きく減らして、2050年にはカーボンニュートラルを達成できる目処が概ね立っているとのことです。都市のマスタープランが、環境政策と密接に関係を持っていて、連携しながら動いているので、全体が調和してうまく進んでいるとのことでした。
もう一つ、EUの政策として自然的土地利用を5%増やさなければいけないということが、とても大きな話となっています。農地を新しく開発しても、農地は肥料などが使われており、自然的土地利用にはならないとされています。林地を開いて開発すると、その分自然的土地利用が減るから、どこかで自然的土地利用を増やさなければなりません。ヘルシンキは極めて林地や水面が多く、可住地がそんなにないところで、どうやって人工的土地利用を減らしたらいいのかというところにとても悩んでおられました。このことと、移民対応と高齢者対応について、どうやって効果的に進めることができるのかにとても悩んでいるという話でした。
アムステルダムでは、「マテリアルフロー」という図が用いられています。例えば住宅を改修するときには、様々な素材が必要ですよね。椅子を入れ替えるとか、机を入れ替えるとか、重機も使われます。各素材がどこで作られていて、原料はどこから持ってきていて、どれだけ脱炭素化していてといったことが、パスポートとしてタグ付けされています。改修にあたっては、様々な素材の図を市役所提出しなければいけない。つまり、都市とか住宅を構成している全ての素材にタグがつけられて、全部管理しているということです。ルールとして、まず市内で調達する。それが難しかったら、隣接した都市から調達する、さらにそれが難しかったら、国内から調達する。それが難しかったら隣接する国から調達ということになっています。
これはヨーロッパ的だなと思ったところですが、環境政策が、自国のものをより使えるという産業政策になっています。環境政策を利用した、内需を拡大する政策ですね。どこまでできているかについては、まだ不十分な点があるようですけれども、推し進めるようにしているとのことです。
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