社会経済的大転換に対応した
持続可能な住宅都市デザインを考える
(2) 世界の都市が直面する気候変動,気候危機,気候アクション
ー気候変動に取り組む緩和と適応のまちづくりー
現代の課題ですが、気候変動が進み、高齢者は熱中症のことを考えると外出もできなくなってしまうし、エアコンもしっかり入れなければいけないという状況です。子ども達ももちろん、極めて厳しい環境に置かれています。これはつまり、社会的に弱い立場の人が大きな影響を受けているということです。この非公平をどうするかを考えなければならなくなっています。
IPCC (気候変動に関する政府間パネル) では、都市の気候変動影響についてのレポートをつくりはじめています。これはとても大きなことで、非公平の問題を解決するためには都市を何とかしなければならないと認識されているということです。都市や住宅地をどうやってつくっていくのかということが、極めて問われています。
もう一つ我々が直面している問題が高齢化です。これはヨーロッパではあまり出ない問題と言われることがありますが、実はそうではなくて、フィンランドでお話していると、高齢社会をとても気にしておられました。
日本では1980から90年代くらいのころ、私の研究室では、高齢社会を研究している先輩たちがいました。そのころに参考にされていた国がスウェーデンやドイツで、確かにそのころの高齢化率を見ると、スウェーデンやドイツの高齢化が先行して進んでいました。しかし、あっと言う間に日本が世界で最も高齢化の進んだ国となってしまいました。
スウェーデンやドイツ、フランスなどを見ると、近年の高齢化率が緩和されている傾向がありますが、日本では緩和されていません。これは移民が関係していると考えられます。日本の出生率は確かに下がっているのですが、例えばフィンランドなどと比べて、違いがあまりない。そしてフィンランドの高齢化率は、日本より低いのですが、その理由は移民の量が全く違うということです。
もともと都市で育ってきた人達は、どの国でも、少子化して、高齢化しています。新しく都市に来た人たちは、農村的な文化を持っており、子どもをたくさん産みます。都市に来て、2代目、3代目、4代目と、都市で暮らす時間が長くなれば、やはり少子化になってくるということで、少子高齢化は都市の問題と捉え直した方がいいということです。
高齢化への対策として、緩和と適応という2つの考え方がありますが、高齢者に住みやすい地域づくりといった、適応をどうするかが主に考えられています。少子化を緩和する都市づくりの検討が併せて必要です。気候変動についても、緩和と適応の両方が必要です。いくら緩和策を進めても、熱中症や風水害、農業や漁業の変化といった問題は次々と起きてきます。適応策と同時に緩和策が必要ということは少子高齢化と全く同じ構図と思っています。ですから、出生率が高くなるような都市や住宅のデザインを重点施策として考えなければいけないとの問題意識を持っています。
高齢社会に適応する地域づくりはソリューションがある程度見えてきたと思われていましたが、お金の問題などから、IOG (東京大学高齢社会総合研究機構) の辻先生がつくってこられた地域包括ケアシステムが危なくなっていることに危機感を抱いています。これまでつくってきた適応策が大都市以外では難しくなるかもしれない。そうなってくると適応策の新しいモデルを考え直すということもありますが、適応策については蓄積がたくさんあることに対して、緩和策についての私達の研究はまだほとんどなく。これを確立する必要があると考えております。
これはグローバルイシューです。住宅・都市の専門家や国・自治体担当者、研究者達はインフラ老朽化や、一人ひとりの収入減少、税収減少といった色々な難しい問題を、突きつけられています。ハウスメーカーの皆様もそうではないかと思います。
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