NEW-NEWTOWNに向けて
 −相鉄いずみ野線沿線の取組−

(3) 相鉄いずみ野線沿線地区

1) 相鉄グループビジョン“Vision100”

 相鉄グループは、相鉄・JR 直通線 (2019年11月30日開業) と相鉄・東急直通線 (2022年度下期開業予定) による相鉄線都心乗り入れを100年に1度の好機と位置づけています。確かに渋谷・新宿方面とのアクセス向上で、新たな担い手がやってくる可能性がありますが、いわゆる「ストロー現象」として、逆に担い手が都心に吸われる可能性もあります。相鉄グループは、2010年9月、相鉄線沿線が「選ばれる沿線」になるために、新たな発想による成長戦略ロードマップをグループビジョン“Vision 100”という形で策定しました。
 “Vision 100”では相鉄線沿線の居住者誘致ターゲットを、①トライアルユース (就職期)、②ハッピーファミリー (結婚期〜子どもの就学期)、③アクティブシニア&ジェントルミドル (親の介護期・退職期) の大きく3つととらえています。そしてこれらターゲットは1つのターゲットの増加がその他のターゲットの増加を促す、相互に関連性の高いものであると考えています。そこで“Vision 100”では、“ターンテーブル・モデル”として、相鉄線沿線で「一人立ちを応援する街」「家族の暮らしを応援する街」「シニアライフを応援する街」の3つが共存し、人口循環が進められるまちづくりを進めるとしています。

2) 相鉄いずみ野線沿線の地域資源と魅力

 相鉄いずみ野線 (二俣川駅~湘南台駅) の沿線では、里山 (谷戸) だったエリアを用いた戸建て住宅地開発が展開してきました。沿線では次のような地域資源や魅力がつくられています。

①緑園都市 (緑園都市駅)
 緑園都市は、1970年代から80年代の開発当時、日本の郊外住宅地技術の英知を結集してつくられた、最先端のまちでした。歩行者専用道路 (四季の径) とループターン・フットパスを用いた歩車分離の構築や、日本版HOA (ホームオーナーズアソシエイション) のRCA (緑園コミュニティ協会) 設立。建築家宮脇檀氏の助言による統一的街並みと二段階植栽、統一表札やロゴの発展などが進められていました。

②弥生台エリア住宅地 (弥生台駅)
 弥生台エリア住宅地では住宅団地の近隣に、農家長屋門や寺院、神社、大きな樹林地が今でも残り、樹林地の多くは竹林で、弥生台の景観を特徴づける地域資源があります。

③万騎が原・みなまきエリア (南万騎が原駅)
 万騎が原・みなまきエリアは、昭和30年代開発の「万騎が原住宅地」(住所:万騎が原) と、昭和50年代に南万騎が原駅とともに開発された「南まきが原住宅地」(住所:柏町) の、2つの異なった特徴を持つ戸建て中心の住宅地が並んでいる地区です。「万騎が原住宅地」では平屋が残り、昭和30年代に描かれた暮らしの様子が垣間見える景観となっています。また、広い庭 (40m²以上) を有する敷地が多く見られます。

3) みらいに向けたまちづくり:6つの視点 (コンセプト)

 横浜市と相鉄ホールディングス株式会社は平成25年4月に、市民・地域団体、大学、行政、民間企業との協働による新たなまちづくりをすすめる目的で「相鉄いずみ野線沿線の次代のまちづくりの推進に関する協定」を締結しました。そして、平成27年に「相鉄いずみ野線沿線 環境未来都市 みらいに向けたまちづくりイメージブック2015」を作成しました。
 このイメージブックでは、大学の支援も受けて、まちづくりを進めていく上での6つの視点 (コンセプト) がまとめられています。
地域経済の循環により豊かな価値を創るまち
多様なサービスが連携するヨコツナギのまち
複合型ライフスタイルによる支えあいのまち
生活創造都市づくりによるチャレンジのまち
地域内移動の活性化による楽しいまち
持続可能な仕組みによる安心・安全なまち
 

4) 相鉄いずみ野線沿線のみらい

 相鉄グループの考えておられる相鉄いずみ野線沿線地区のみらいは次のようにまとめられると考えられます。
駅前には生活サービスを設置しつつ沿線に戸建住宅地を展開してきたが、高齢化も進展してきている
サービスを求める高齢者層を中心とした駅前への住み替えのために駅前に集合住宅を設置 (サ高住・分譲・賃貸)
多世代のミックスのための多様なタイプの供給
生活サービス施設もリニューアル
周辺の戸建て住宅の買い取り・譲渡・貸借
外部ファミリーへの戸建住宅 (地) の再分譲・新たな供給の仕組み