NEW-NEWTOWNに向けて
 −相鉄いずみ野線沿線の取組−

横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院 準教授 野原卓

 高度成長期に開発されたニュータウン、しかし現在はオールドタウン化している住宅団地を、住むだけではなく、働き・遊び・購買する『NEW-NEWTOWN』として再編することが考えられます。横浜市の相鉄いずみ野線南万騎が原駅周辺の「万騎が原・みなまきエリア」における「みなまきプロジェクト」の実践を通した『NEW-NEWTOWN』構築について、横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院の野原准教授に伺いました。

(1) 都市を取り巻く環境の変化

 日本は歴史上初の縮減社会になりました。2014年に日本創成会議は、2010年から2040年の間に若年女性人口が5割以下に減少する市区町村が全国1799のうち、896にのぼることを発表し、この896自治体を消滅可能性都市と位置づけました。1都3県における町丁目別の高齢化率をみると、高齢化がスポット的に起きています。さらに日本の都市は気候変動や環境・災害の問題にさらされています。
 しかし人口が少ないこと自体が問題というよりも、今まで経験したことのない減少カーブ突入が課題であり、これまでの生活の考え方を変える必要がありますが、新たな豊かさもあるはずと考えられます。人口増加時代は、機能主義にもとづいて、「住む」「働く」「楽しむ」の都市機能を分けることが効率的でした。それに対して、人口減少・成熟時代の都市のつくり方はどうすべきでしょうか。

(2) 横浜市持続可能な住宅地モデルプロジェクト

1) 大郊外都市 横浜

 横浜市は戦後、東京のベッドタウンとして郊外の住宅団地供給が急速に進んだ大郊外都市で、500戸以上の大規模団地が66箇所存在しており、郊外部に市の人口の約6割が居住しています。そして高度成長期に開発されたニュータウンは一斉高齢化でオールドタウンになりつつあります。横浜市では「横浜都民」と「南北問題」が指摘されています。「横浜都民」とは仕事や娯楽のために横浜市内ではなく東京に通う住民、「南北問題」とは市北部では人口増加が進み、高度成長期に大量の住宅団地供給が進んだ市南部において少子高齢化が深刻になるということです。
 大量供給された戸建て住宅団地を眺めますと、単一化した戸建て住宅の海に見えます。住宅だけが建ち並ぶ「ベッドタウン」から、多様な世代が多様な形で行き来する「まち」のカタチを取り戻す必要があると考えられます。

2) 横浜市持続可能な住宅地モデルプロジェクト

 横浜市では郊外の少子高齢化や開発が進むことによる様々な課題解決に向け、「持続可能な住宅地モデルプロジェクト」として、モデル地区での協定締結での公民連携により、団地再生や、地域特性を活かした取組みを展開しています。モデル地区は、①たまプラーザ駅北側地区 (青葉区/市北部)、②十日市場町周辺地域 (緑区/市北部)、③相鉄いずみ野線沿線地域 (旭区・泉区/市南部)、④洋光台周辺地区 (磯子区/市南部) の4箇所で、今回ご紹介する相鉄いずみ野線沿線は4つのモデル地区の1つです。