高齢者住宅関連を含めて来年度の状況等について
国土交通省住宅局安心居住推進課長 多田治樹
成熟社会居住研究会では、国土交通省住宅局安心居住推進課多田治樹課長から身体機能低下後の住まいと住宅セーフティネットに関する2019年度から国交省の取り組みをうかがいました。
(1) 身体機能が低下した場合の住まい
国土交通省安心居住推進課では主にサービス付き高齢者向け住宅と、一昨年施行された新たな住宅セーフティネット制度に関連して、高齢者含めた低所得者や障害者といったいわゆる住宅確保要配慮者の方々への居住支援を中心に仕事をしております。
皆さんご承知のように、空き家増加が進んでおり、まちの中でも空き家、空き地がどんどん出現してくると、民間セクターの様々なサービスや公的サービスが一定の商圏がないと成り立たなくなっていきます。これが地方だけではなくて大都市圏でもこうした事が起こり始めており、都市局を中心にコンパクトシティ、コンパクト+ネットワークというような取り組みを進めようとしているところです。
高齢化については既に色々なデータがあり、2016年の我が国の死亡者数は130万人台だったものが、2025年には152万人になり、2040年では168万人になるとされています。そして言い方は悪いですが、死に場所難民みたいな方がたくさん出るとも言われています。どこでお亡くなりになるかについてですが、73%の大多数が病院で、自宅は13%です。そしてこれは意外だったのですが、持ち家率が高く、三世代同居が多い福井県における自宅で亡くなる方は11.9%、石川県は9.8%で、東京都17.9%、神奈川県17.1%と都市部の方が自宅での死亡が多くなっています。
いずれにしろ今後、自宅でお亡くなりになる方が増えていかざるを得ないと考えられます。かつての住宅双六では一戸建てがゴールだったわけですけれど、新住宅双六では色々な選択肢が出てきていて、それは一見、豊かになったとも言えますが、何が上がりか分からないという状況でもあります。東大の大月教授は、何かあったときに次にどんなところに移り住まなければならないか想像がつかないという漠然とした不安で、この高齢社会の先行きが恐ろしい感じになっており、こういう不安を解消する上でも街の既存資源、例えば空き家・空き地といったものを活用した上で、街の中で住宅双六を形成していってはどうかという提案をされています。見ず知らずの土地の施設に入るのではなくて、最期まで自宅あるいは近所で過ごせることが多くの人にとっては望んでいることなのかなと考えています。
身体機能が低下した場合に住みたいところについて国際比較しますと、日本では自宅49.3%が最も多くなっていますが、一方で老人ホームや病院の希望が海外に比べると比較的多く、高齢者住宅の希望が少なくなっています。やはり自宅で過ごしたいという希望に応えていく必要があるのかなと思っています。また、今後求められる住まい方については、「介護が必要になっても安心して暮らし続けられる住まい」を希望する方が、20代から70代まですべての世代で大変多くなっております。
(2) 高齢者の居場所
首都圏在住高齢者の退職後の居場所についての調査によりますと、高齢者の2割が自宅以外の居場所が「見つからない/特にない」と回答しています。一方で別の調査において、高齢者が社会参加していて良かったこととして50%以上の方が「安心して生活する為の繋がりができた」「新しい友人を得ることができた」をあげており、社会参加の効果が表れています。別の調査におきましても、心身を支え安心させてくれる周囲の家族、友人、同僚などの少ない方は、脳卒中の死亡リスクが高いというデータが出ています。高齢者だけではなく、実は若者についても、居場所が多いほど生活に充実度を感じているというデータがあります。
1日の中で地域に一番よくいる人というのは、小さなお子さんと高齢者で、この世代を足し合わせて地域密着人口という捉え方をしますと、最近は高齢者の方が増えていますから、子供は減っているのですが、地域密着人口全体は増えています。何かこれまで希薄になっていた地域でのつながりを再構築する、といったことも今後必要になっていくのではないかなと思います。
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