生活・ケアから住まいを考える
-介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に期待すること-
③ 受容と継承
高齢期においては、不安や悩みを受け入れていくという概念も重要であると考えています。自立というと「独りで生きていく」という強いイメージがあるかもしれませんが、人はそんなに強くないという部分もあります。この時に必要なのが他者の存在です。自分自身で受け止めていくだけではなく、他者との関わりを通じて自分を位置付けていくことが大切であると考えています。
昨年度から研究を行っているホームホスピスでは、看取りに関するお話を伺ってきました。「死」という不安をどのように人々が受け入れているのかという一端を垣間見た事例として、入居者の方が亡くなった時に、同居者の方々がその方の部屋を訪れ挨拶をされて行かれました。その様子をみて、1人の入居者の方はとても安心したと言われていたそうです。「自分が亡くなるときもみんなに囲まれてあのように亡くなっていくんですね。その事がわかって安心しました」と言われていたそうです。この事例から、私はホームホスピスという環境の中で、同居者の方に見守られて亡くなっていく。そのプロセスを共有する事が、死への恐怖や不安を受け入れる (受容していく) プロセスにつながっていくと考えています。
さいごに、継承についてですが、入居者が亡くなられた後も、家族の方がホームホスピスに来られ色々な思い出話をなさるそうです。それは
家族が感じる喪失感を和らげる
ことになっています。それを入居者の方が見ておられて、自分もホームホスピスの中に生き続けていく (継承されていく) ことを知り、その事が安心感につながっていると考えています。
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