フィンランドの高齢者住宅・施設事例から見る日本のこれから
〜日・フィンでの居住者アンケート結果を交えて〜 <その2>


2) 転居の理由
 2011日本とフィンランドのアンケート回答者は、年齢と身体的な自立度が近いということを前提に、高齢者住宅でどのように暮らしておられるかを見て行きます。
 居住期間は、日本では比較的新しい高齢者で調査を行ったために、1年未満の方が多かったのですが、フィンランドの高齢者住宅は比較的長い歴史を持ったものもあり、3〜5年の方が多く、5年以上住んでいる方もおられました。フィンランドでは主にヘルシンキ市、日本では首都圏の高齢者住宅で調査しましたが、高齢者住宅以前の住宅が賃貸か持ち家かの傾向は大きな違いがありません。しかし、高齢者住宅に転居するときに持ち家をどのように処分したかについては、日本ではそのままにしている方が多いのですが、フィンランドでは3割の方が売却しています。前の住宅での居住形態は、日本では子どもと同居していた方が2割前後おられましたが、フィンランドではほとんどおられず、1人暮らしかご夫婦でお住まいでした。転居の検討時期は、フィンランドでは1、2年ぐらい前に決めたという方が4分の1ぐらいおられます。転居を誰が決めたかについては、フィンランドでは自分で決めた方が3分の2ぐらいで、子どもなど家族が決めた方は2割弱です。日本では家族が決めた方が半分以上を占めます。
 転居の理由は日本では自分や配偶者の身体能力の衰えの割合がフィンランドより高くなり、フィンランドでは立地が日本より高くなります。フィンランドは非常に密度が低い国で、移動距離の長さなどの生活の不便さがあり、転居の理由はより便利なところに住みたいということがあるようです。 fig4