講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.レッチワースの建築コントロール
齊藤:  ヘリテージ財団は、管理規則に従って非常に強い建築コントロールを課しています。増改築や修繕をするときは、行政はもちろんですが財団からも許可を得る必要があります。
松村:  現在のレッチワースでは、土地・建物を居住者が所有していると聞きました。どうして財団はそうした建築コントロールが可能なのですか。
齊藤:  当初のレッチワースは、ハワードの田園都市論に従って借地でした。戦後のイギリスは、そうした権利を個人が購入できるような政策を推し進めたため、現在はレッチワースでも居住者が土地所有している場合が多くなっています。ただし最初は借地権を売って、それを後から買い取るような方式になっています。借地契約の中には、財団が課す建築ルールを守るという条件が設けられています。こうした条件が土地購入後にも継承されるので、居住者が土地を所有した後も財団が増改築や修繕を一つ一つチェックして許可を出せるわけです。
もっともそうした建築コントロールは可否を出すことより、居住者が行う増改築などに対して、財団の専門スタッフが色々とアドバイスしていることに重要な意味があると思います。2012年に再訪した時には財団の建築ルールが変更されていて、建設時期に応じて異なるガイドラインが適用されるようになっていました。チープコテッジ地区と隣接地区は1920年代を境に分けられるので、年代別のルールを設けることで、両者の差別化を狙ったようです。
松村:  イギリスにはレッチワース以外にも、ハワードの田園都市構想に基づく住宅地がいくつか開発されましたよね。ヘリテージ財団のような管理運営主体が存在する住宅地が他にも存在しますか。
齊藤:  レッチワースの場合、時代とともに変化しながらも住環境の骨格が持続しているのは財団のおかげだと住民からは高い評価を得ています。でも他の住宅地にはこうした組織は存在しないようです。

松村:  アンケート結果を見ると、財団は住環境の維持・向上に重要な役割を果たしていないと考える居住者が、隣接地区には3割近くいますよね。
齊藤:  歴史的な価値の高いチープコテッジ地区と違って、隣接地区の方は普通の地区ですからね(笑)。そちらの方では、ヘリテージ財団の建築コントロールを嫌がる意見も多くなります。



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