講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


7.いかにして“ブランド”をつくるのか?
角野:  そのブランド力の構築については、検討すべき事柄がたくさんあることは確かです。でも、ブランドイメージをつくっていかないと、郊外が生き残れないということははっきりしています。
松村:  ゴーストタウンのような郊外がポコポコと出てきて、あそこはまだ元気だが、あそこはもう死んでいる、というように、明暗がはっきりと分かれていくでしょうね。
角野:  関西であれば、北摂の郊外住宅地は生き残っていけるような気がします。でも、生き残っていけないな、というような郊外も実際はあります。極論かもしれませんが、そういう郊外に対しては、いかに安楽死させるかというプログラムづくりも必要になるのかもしれません。仮に、街が死んだとしても、人が幸せならばいいと思うのです。でも、まずは生き残るためのプロジェクトをはっきりさせることが先決でしょう。
鈴木:  ブランドをつくる際に、まとまって入居してくる人々の規模をどうお考えですか?
松村:  新たな入居者があるまとまりで現れたら、店舗などは道沿いに何件かできて、そこからまた増えていくような感じになるんじゃないかなぁ。
角野:  そうですね。ブランド力をつけさせるときに鍵を握るのが、道じゃないかと考えています。つまり、センター地区という考え方はもう古いのではないか、今の郊外にはもはや合わないのではないか、という議論をしている最中です。

と言うのも、何もないところに住宅地をつくるからセンターという発想が生まれるわけですが、周りの市街地と連担しながら活性化を図ろうとすると、センターの役割が分からなくなってくる。商業施設であれ住宅であれ、それらが通りに面することによって、街のイメージが作られている。景観的にもその場所の性格がはっきりしてくる。どんどんと通り型の中心市街地が形成されていくことを願っています。
松村:  先ほどの長池の例もそうですが、このようなことを考え方は同時多発的に生まれつつあるんでしょうね。この動きが大きなうねりになればいいですね。
西田:  国は動いているんですか?
角野:  国土技術政策総合研究所が、全国的に郊外の調査をはじめました。でも、あくまで調査レベルであって、方向性を打ち出すまでには至っていません。また、住み替え支援のための政策を念頭に置いているかどうかも、まだはっきりしませんね。
鈴木:  これは非常に重要な問題ですが、住民にとっては、それを認識するのにちょっと難しいところも多いのではないでしょうか? つまり、自分の介護とか周辺地域のことについては分かるけれど、自分が亡くなった後のことや周辺に空き家がポツポツ出てきたときのことについて実感している人はあまり多くないんじゃないでしょうか。その間に、ワンクッション必要な気がします。

そう考えると、住民だけでは難しい点も多そうですよね。現実に空き家が増えている住宅地では実感として認識されるのかもしれませんが、そうでないとなかなか住民が事前に自発的には動けないでしょう。
角野:  その辺りは大きなジレンマですね。空き家が多発してからでは遅いわけで、何年後かの姿を私たちが医者として言うべきだと思うのです。



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