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角野: |
では、次の世代に、郊外住宅地の住環境やライフスタイルが継承されていくのでしょうか。実は、僕の興味は、そうした「世代間継承」にあります。というのも、これからの人口減少の中で、条件の悪いところではそうした蓄積は捨て去られていくでしょう。ではどういう条件があれば捨てられないのか。また、捨てられてしまった宅地やインフラ、空き家を全く別の形に変えられないのか、という問題を考えたいのです。
一昨年から去年まで、川西市にあるD団地の調査を行いました。これは、昭和40年代前半に開発された団地で初期入居の人々はリタイヤしていてし、子供たちが相続していない住宅もある。その町の第一世代と第二世代とでは、町に対する意思や相続指向がどのように異なっているのかということを調べました。その結果、第一世代は非常に満足度が高い。これはこの団地に限らないと思います。千里でもほかのニュータウンでもそうだと思いますが、高齢化して生活圏が狭まっていくと買い物や通院等に不安を感じるようになりますが、満足度は高い。一世代の70〜80歳代の人々の八割くらいが非常に満足している。一方、第二世代の50〜60歳代の人々はフラフラとしている。
しかし、70〜80歳代の人々がそこに住み続けられるかというと、子供がそれをさせないケースが出てくる。介護の問題等で、強引に引き取るわけです。すると、急に空き家になってしまう。でも、すぐに土地と家を売ってしまうかというと、すぐには売らない、しばらくそのままにしておくんですよ。外見は住んでいるように見えても、近所の人に聞いてみると、実は息子さんが月に一回掃除をしにくるだけです。要するにキープしておくんですね。そういう息子さんたち、つまり第二世代もふるさと意識は持っているのです。すぐに売り払わなければならない理由がない限り、しばらく持っておこうということになる。
第二世代のなかには、相続や同居をしている人々、あるいはD団地内のほかの住居に住んでいる人々がいて、そういう人々はある程度覚悟を決めています。50歳代の第二世代になると、一生ここに住むと決めている人もいます。その一方で、結婚していなくて同居している人もいるわけでして、彼らはものすごく出て行きたがっている。また、既に世帯分離して同居していない人々は、ほとんど帰ってこない。この団地で育った人は学歴も収入もあって、戻る必要がないのです。アンケートによれば、同居していない第二世代の半数が分からないと答え、もう半数の1/2〜2/3は絶対に戻らないと答えました。要するに、間違いなく戻ってくる人はほとんどいないわけです。
第一世代は、満足度が高く、死ぬ直前まで住み続ける。自治体はそうした人々のサポートをしなくてはならない。現在、全国の自治体が地域福祉計画という施策を立案することになっています。要するに、行政区域をいくつかに分けて、それぞれのコミュニティーで高齢者を見守りましょうという施策ですが、そこでの目標はニュータウンの維持管理に必要とされている内容と重なる部分が多い。例えば、地域の自治会の活動が期待されている点などは同じです。このような福祉を軸とした施策によって、ニュータウンの第一世代の満足度を維持しつつ、その土地に留まってもらうプログラム作りは始まっている。しかし、こうしたプログラムが100%うまくいったとしても、ニュータウンが次の世代にうまく引き継がれていくかどうかは非常に危ういのです。
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