ライフスタイル考現行


5.茅葺き民家の再生に向けて
松村:  この民家でどういった研究をしているんですか。
菊地:  差し茅のワークショップを行なった学生が、それを題材にして修士論文を書いているところです。茅葺き職人からいろいろと技術を教わったので、それをまとめています。茅葺き職人によると、最近は茅葺き技術の融合が起こっているらしいんです。職人が少なくなって様々な場所から手伝いが来るようになった影響のようです。
松村:  それは面白そうですね。安藤邦廣さん以降、茅葺き研究をしている人を見たことがないので、研究成果が楽しみです。それにしても、この民家をこれからどうしたらいいんですかね。広島では学生がサークルを作って、茅葺き民家の世話をしていると聞きましたが、その活動にしてもこれから続いていくかどうか不透明です。
菊地:  そうなんです。学生のうちは一生懸命やってくれるけれど、卒業したらこなくなっちゃう。
松村:  最近は茅葺き民家に関連した取り組みが各地で行われているので、ネットワークを作ったほうがいいんじゃないかな。
菊地:  今回、茅葺き民家の再生に取り組んでみようと思ったのも、岡部明子さんが千葉大学時代から取り組んでいる「茅葺きの家ゴンジロウ」があったからなんです。岡部研究室では学生と茅葺き職人が協働して、千葉県館山にある茅葺きの民家を段階的に葺き替えていますよね。そして、お茶会や展覧会などが開かれるコミュニティ空間に再生されている。自分にもできるんじゃないかと思ってやってみたら、どれだけ大変かがよく分かりました(苦笑)。
松村:  今となっては技術としての合理性が失われてしまったんでしょうね。昔は茅場が身近にあったかもしれないけれど、もはや入手しやすい材料というわけでもなくなってしまいましたから。
菊地:  稲藁や麦藁に比べると、昔から茅は貴重だったそうです。だから、この家でも葺き替えに向けて小屋裏に茅を蓄えていて、それが今でも残っています。
松村:  茅葺き民家に関心を持つ若者が各地にいることは確かなので、何らかのムーブメントに発展していくといいですね。



前ページへ  1  2  3  4  5  6  7  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP