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2.筑後吉井地区の伝統的建造物群
菊地:  城下町久留米と天領日田を結ぶ豊後街道の宿駅だった筑後吉井は、江戸後期になると商品作物の集散地となり、さらに幕末からはそれらを加工する産業が発達し、在郷町として栄えました。それらによって蓄えられた富は「吉井銀(よしいがね)」と呼ばれ、金融業も起こって明治中期には銀行が開設されます。
江戸時代の吉井の町家は茅葺きが主でしたが、明治2年(1869)に大火にみまわれ、それ以降、豪商が財力を背景に瓦葺きの白壁造り町家をこぞって建てるようになり、それが一般層へと広まりました。つまり、現在の白壁の町並みは、明治以降に形成されたものです。
筑後吉井が、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されたのは1996年です。その2年前に街なみ整備環境整備事業も始まり、これら二つの制度によって歴史的町並みの保存・整備が進められています。2006年までに約150件の修理・修景が実施されました。
自治体としては、こうした取り組みによって町が活性化することを期待していたわけですが、実際には目論見どおりにはなっていません。国の重伝建地区に選定された前後で営業する店舗の数を比較してみると、選定される前よりも後の方がむしろ営業店舗の数が減っていて、それ以降も表通り沿いでは減少の一途をたどっています。一方で、通りの裏側の、それまで店舗がなかったところに新規出店が見られるようになりました。これらは「裏吉井」と呼ばれていて、町家以外の建物をリノベーションして出店する場合が多く、石井さんが開店したMINOU BOOKS&CAFEもその一つです。





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