高齢者が集まって住まうことによりサービスを提供しやすくなることは、サービスを提供する側も受ける側もメリットがあります。さらにサ高住における見守りサービス等の地域提供が進めば、高齢者が施設などに入らなくても地域に住み続けられるような社会がつくられると考えます。そのためには、介護保険サービスと、そのプラスαとなるサービスによる、その人がその人らしくいられる地域づくりも必要ではないかと考えており、皆様のお知恵をお借りしたいと思います。在宅の高齢者に対して普段の話し相手や外出支援といった介護保険外サービスを提供できるような取り組みを行っているところがあり、好評を得ているという話ですので、介護保険外サービスというものが今後キーワードとなってくると考えます。
高齢者が普通に地域で暮らすことを住宅サイドで考えた、地域に開かれたサ高住として、次の事例を紹介いたします。
①ゆいま〜る大曽根(愛知県名古屋市) : 既存ストック改修による分散型サ高住
- 集合住宅に点在する空き家をサブリースし、分散型サ高住としてリノベーションしたものです。ここでは1つの住棟内でサービスを展開していますが、省令改正が進むと、サ高住とは別の住棟においても、分散型サ高住としてサービスの提供が可能になります。そして1つのサ高住を軸とする地域展開がさらに進み、その周辺にある小規模のサ高住や、一般的な自宅にお住まいの方の見守りサービスも提供しやすくなると期待しています。
②銀木犀<船橋夏見>(千葉県船橋市) : 誰もが気軽に立ち寄りたくなるサ高住
- サ高住の一階部分に駄菓子屋や食堂・カフェといった地域に開放された「たまり場」があり、高齢者のためだけの建物ではなく、地域の方と時間を共有できるような取り組みの事例です。高齢者が、高齢者のコミュニティだけで閉じない空間で生活できることがいいことなんだろうなと考えております。ただそれが“高齢者の何にいいのか”という点について、皆様と意見交換ができればと考えております。
③アンダンチレジデンス(宮城県仙台市) : 医食住と学びの多世代交流複合施設
- 敷地内にサ高住と、看護多機能、和食レストラン (夜は居酒屋)、保育園、障害者就労支援事業所、コミュニティスペース・駄菓子屋などを整備しており、障害を持った方や高齢者の方も一緒に生活できる共生社会のコミュニティをつくる取組みを行っています。サ高住の食堂で定期開催する、孤食防止と食育目的の「子ども食堂」では、入居者と多様な人びとが協しております。このように、1人親世帯など生活に困るような方が地域に住める状況をつくる取組みが必要なのかなと考えます。
平成29年施行「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律 (住宅セーフティネット法) の一部を改正する法律」による新たな住宅セーフティネット制度は、空き家がある一方で、高齢者や低所得者など住宅に入りたくてもなかなか入れない方がいるところをマッチングするものです。現在は施行から4年経ち、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅の登録住戸数が43万戸を超えています。共生社会として、低所得者・高齢者・障害者・子育て世代などが安心して住まう環境をつくっていくことが必要と考えます。住宅セーフティネット制度などに企業の方が参画いただくことで、理想的な住宅の業界がつくられると考えています。
地域のサービス拠点としてサ高住の存在感が増していくといいと考えています。そして、自宅に住み続ける、あるいはサ高住に住み替えるなど多様な選択肢を提示して、その方その方の希望に沿った生活の送り方を支援できるといいなと考えています。