サービス付き高齢者向け住宅の政策に関する
国土交通省との意見交換
2 高齢者住宅をめぐる最近の状況 (国土交通省住宅局石坂課長より)
(1) 日本の人口
日本の人口は2005年をピークに減少が進み、さらに世帯数は2019年がピークと予測されています。三大都市圏以外のほとんどの都道府県では既に世帯数減少が始まっていますが、これは高齢者数についても同様であり、三大都市圏以外では高齢者が減り始めているところが多くなっています。高齢者が減り始めている地域で、入居料の比較的高い特養が余るようになる段階になったと考えられます。
世帯類型を見ると、2010年から単身世帯が最も多く総世帯の1/3を占めるようになり、今後も単身世帯が増加する見通しです。今後、夫婦と子の世帯が減少していく一方で、ひとり親と子世帯は増加すると考えられます。高齢単身など、在宅介護が難しい高齢者世帯がこれから増加することが着眼点となります。
年間死亡者数は2008年で推計114.2万人と、終戦後1947年の113.8万人を初めて超えました。その後年間死亡者数は増加し続け、1965年生まれが75歳となる2040年がピークになると予測されています。現在は死亡者の8割が病院で亡くなっていますが、これから年間死亡者数が増加し続けることで、病院という場所で亡くなることができなくなると考えられます。自宅や高齢者住宅での看取りが今まで以上に重要になると考えられます。
15歳から65歳の生産年齢人口は1995年をピークに減少が始まっています。1995年から2015年までの10年間で生産年齢人口が約1,000万人減少しています。これまでは団塊世代が前期高齢者になっても働き続け、労働力人口に貢献してきましたが、2017年からは60代後半の人口が減少し始め、70代の人口が増加することでこの効果はなくなると予測されます。生産年齢人口減少は経済状況に影響しますが、さらに介護の人材という点においても、介護のための建物を建てても人材が確保できない状況となりつつあるというお話を事業者から伺っていますが、これからの高齢者増加と生産年齢人口減少によりさらに人材確保の難しい状況になるのではと危惧されます。
(2) 住宅セーフティネット法改正とサ高住
10月25日に施行予定の住宅セーフティネット法改正の趣旨は、単身高齢世帯の大幅増加や子どもを増やせない若年夫婦、特にひとり親世帯の低収入といった住宅確保要配慮者の状況と、公営住宅の大幅増が見込めない一方で民間の空き家・空き室増加といった住宅ストックの状況から、空き家・空き室を確保し、住宅セーフティネット機能を強化するものです。空き家・空き室は全てが利用できるものではありませんが、十分に利用できるものを流通させることが大事です。また、サ高住への住替えにおける、それまでの自宅の資産活用という点からも中古住宅の流通に取り組むことが重要です。
1戦後の住宅政策は、住宅不足に持ち家政策と公的賃貸住宅政策で対応するものでした。空き家増加傾向の中でのこれからの住宅セーフティネットは、ハード・ソフトの連携により、地方公共団体が供給・管理する住宅(公営住宅など)と、認定による民間活用住宅(特優賃・高優賃など)、一定の品質水準が確保された民間住宅(サ高住など)の登録・補助・支援という重層的なものとなります。
1高齢者の生活を支える仕組みは、まず住宅サービスがすべての基礎としてあり、その上に安否確認や家事代行などの生活支援サービスがあり、さらに必要な人に提供される介護サービスがあるというものと考えられ、これは地域包括ケアの理念とも共通する考えです。もともと、この考えを踏まえたものがサ高住です。昭和63年からシルバーハウジングとして、公営住宅等において生活援助員(LSA)による安否確認や生活相談を行う住宅を供給してきましたが、その民間事業者版としてサ高住がつくられました。さらに、サ高住では、必要に応じた生活支援サービスや介護サービスを提供することもできるようになっています。しかし、実際は特養などの代替として活用されることが多く、実際の入居者は要介護・要支援者の合計が約9割となっています。
1特養は42万床にまで増加しましたが、サ高住22万戸と有料老人ホームの合計は60万戸であり、サ高住・有料老人ホームは特養を超えて、最もポピュラーな高齢者の住まいとなりました。様々な事業者が参入しており、サービス内容も多様であり、消費者が選択しやすいよう、高齢者住宅推進機構による情報提供システムに期待しています。
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