スウェーデンのコレクティブハウスにおける
 共食活動の運営と環境

 

3) BiGモデルの拡がり
 スウェーデンでは1960年初頭以降の子どものいる女性の就労率向上の影響を受け、1970年代に女性の権利獲得を目指す団体による、家事労働の協働化が進みました。1976年に女性運動団体「グループ8」が家主がレストラン運営を辞めてしまったコ・ハウジングにおいて厨房で住民自身による調理活動を開始し、現在も継続しています。さらに 女性運動団体「BiG」(“共に暮らす”という意味)が1970年代後半に、新たなコ・ハウジングの建設を推進し、現代スウェーデンのコレクティブハウスにつながる協働モデルを構築しました。
 BiGモデルは、保育サービスに加えた、新たな女性就労支援のためのサービス需要として注目され、拡がりました。1970年代にストックホルム初のコレクティブハウスが、エルヴヒュ地区のプレストゴードハーゲンに建設されています。スウェーデンでは自治体が住宅供給建設会社を所有していますが、この住宅はストックホルム市の住宅供給建設会社ファミリィ・ボスターデル社副社長マッツ・フルス氏によって提案・開発されました。ストックホルム市は住宅供給建設会社を現在3社所有していますが、この中でファミリィ・ボスターデル社のみが今でもコレクティブハウジングを公的賃貸住宅として供給しています。その後、女性の就業率が98〜99%くらいまでとても高くなり、市民にとってのニーズがとても高いということで、1980〜90年代にかけて、国内には50箇所ものコレクティブハウスが建設供給されましたが、その多くは家事協働型のBiGモデルによるものです。
 こちら(図1)は、プレストゴードハーゲンの平面図ですが、とても豊富な共用空間が整備されていることが分かると思います。ダイニングルーム、キッチン、ランドリー(洗濯室)、陶芸の部屋、写真現像室、サウナ、レストルーム、ミーティングなどを行うクラブルーム・オフィススペース、託児施設、駐輪場が共用空間として用意されています。
fig1
 コレクティブハウスはスウェーデンの住宅ストックの中では数パーセントに満たないものですが、年々こうした住まい方の価値というものが拡がる中で、三大都市部を中心にコレクティブハウスの建設が進められました。