スウェーデンのコレクティブハウスにおける
 共食活動の運営と環境

 

東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授 水村容子

東洋大学水村教授は、住居計画・住居学を専門にしておられ、特に高齢者や障害者に配慮した住環境について研究を進めておられます。スウェーデンでの研究活動も積極的に進めておられます。成熟社会居住委員会ではこれまでも何度かご講演をお願いしておりますが、今回はスウェーデンのコレクティブハウスにおける共食活動の調査研究についてお話を伺いました。

(1) スウェーデンの住宅事情近況

1) スウェーデン型のコレクティブハウス
 コレクティブハウスという、自主運営による集合住宅については皆様もこれまで耳にされたことがあると思います。日本では公営住宅の一部で供給されていたり、東京ではNPOコレクティブハウジング社による供給が行われたりしています。コレクティブハウスはより広義の用語でコ・ハウジングとも呼ばれ、ヨーロッパではオランダやベルギーなど各国で見られますが、特にスウェーデン型の特徴は、共食活動 (コモンミール) の活動です。これは居住者が食事当番を担い、主に平日夜に一緒に食事をとるものです。本日は、この共食活動がどのような共有空間で、どのような組織によって行われているかをご紹介したいと思います。

2) 住宅政策の転換と住宅供給状況の変化
 スウェーデンは福祉国家としてイメージされることが多いと思います。福祉国家体制に基づいて、自治体が質の高い公的賃貸住宅を供給していると紹介されてきました。1990年代以降は政治体制が変化し、住宅市場の民営化と同時に、アフォーダブルな公的賃貸住宅の払い下げと協同組合所有住宅への所有変更が進んでいます。協同組合所有住宅は、住民が組合から居住権を譲り受けるもので、日本の区分所有に近いものへと変化しています。
 スウェーデンでは人口増が続いていますが、国が実質的に必要と設定している住宅供給量に対して、新規住宅の供給量が追い付いていません。特に人口が集中している、ストックホルム・ヨーテボリ・マルメといった三大都市部において、慢性的な住宅不足が生じています。このような状況で、居住水準の低下が起きています。ストックホルムの友人によりますと、窓が無いスペースが間仕切りなどで実質的な寝室として使われているような、非常に狭小な住宅が増えてしまっているとのことです。