生活・ケアから住まいを考える

-介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に期待すること-

 

【質疑応答・意見交換】

成熟研委員:最低基準が標準となってしまうという傾向の一方で、今日ご紹介いただいたように、優れた高齢者住宅もあります。そうした優れた事例を事業者がつくられたモチベーションはどのようなものでしょうか?
それが分かれば、これから優れた事例を増やしていく糸口になるかと思います。
山口氏:先ほどの事例で法人がなぜあれだけ頑張られたかというと、実は見学者がとても多いという部分があります。見られているという意識がモチベーションにつながっています。つまり第三者の視点が入っているということが大事です。有料路人ホームには第三者評価という仕組みがあります。サ高住や有料老人ホームが積極的に第三者評価を取り入れていけば、より質の高い住宅の促進につながっていくのではないでしょうか。そして、第三者評価を誰がやるかについては、ぜひ民間事業者の団体から手を上げていただきたいと思っています。行政等から強制されるのではなく、自分たちでボトムアップしていく姿勢が積極的な質の向上につながると思っています。
成熟研委員:特養の事業は社福や地方公共団体が主体になる一方で、サ高住や有料老人ホームは民間事業者によるもので、事業の継続性のための利益を出すというビジネスモデルの違いがあります。サ高住・有料老人ホームと特養の、建築コストの考え方など、ビジネスモデルの違いと建築の違いの関連についてのご研究はなされていますか?
山口氏:私自身はコストの研究は行っていません。一般論となりますが、特養には補助金があり、社福は非課税であるため良いモノが作れるという部分もあると思います。ですが、特養の居住費等は実質的に固定化しており、収益の幅が決まっています。一方、サ高住・有料老人ホームは入居料等の価格を自由に設定できます。制度面での自由度も高いことから、今までにないより良いケアや空間のあり方を探求していただき、少し高いけど入りたくなる施設や住宅を目指していただきたいと思っています。
吉田座長:今までのサ高住の半数以上はハウスメーカーがつくっていますが、今のサ高住を次世代にいい形で渡すにはどうすればよいでしょうか。
山口氏:すでにあるサ高住をどのように考えていくかというご質問かと思いますが、18m²のサ高住を大幅に改修していくことは難しいと思っています。ハードではなく、ケアの面でもう少し改善できないかと思っています。消費者の目線でみると、今の外付けサービスなのに、24時間で職員が配置されているという仕組みは複雑で分かりにくくなっていると思います。外付けサービスの住宅は、利用者の自立を尊重した外付けサービスをより整え、重度の要介護高齢者が多く、24時間体制の介護を希望する人が多いサ高住などは特定施設に転換していくなど、消費者がわかりやすい仕組みにしていくことは大事かと思います。
国交省石坂課長:各ハウスメーカーの規格品タイプのサ高住が供給されてきたという面があると思いますが、そこでもうひと工夫があれば、住まいらしい環境のサ高住がつくられるかなと思います。
山口氏:高齢者施設の目標は施設を住まいらしくするということであり、ハウスメーカーの方が培ってこられた住宅に関するノウハウをもっと施設計画の中につぎ込んでもらいたいと思っています。例えば、扉などの建具や部材も施設仕様ではなく住宅仕様で考えていただき、インテリアやスケール感も住宅らしさにこだわっていただければと思います。


以上