生活・ケアから住まいを考える
-介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に期待すること-
3) これからの高齢者住まいに向けて (試論)
① 量から質へ
高齢者住宅が足りないから最低基準のものでも、どんどんつくらないといけないという議論があります。しかし2015年時点において要介護高齢者人数に対する高齢者住まい (特養、老健、グループホーム、療養型病床群、有料老人ホーム。サ高住の合計) の定員数は約37%となります。つまり、要介護度1から5の高齢者3人に対して1以上の施設数が確保されています。在宅で生活している要介護高齢者も多いことから、高齢者住まいの数は充実してきていると言えるでしょう。つまり、
高齢者の住まいはすでに量から質の時代に移行
しています。今後、基準だけを見た施設では、空き室が目立つ施設も出てくると考えています。
それでは、サ高住などの高齢者向け住宅に必要な生活像や理念とは、どのような内容が望ましいでしょうか。これらを確立していくことが高齢者向け住宅の質の向上につながっていくと言えます。私はこれからの高齢者住まいに必要なことは、高齢期における自己同一性 (アイデンティティ) であり、私が私であるために必要なことを見つめなおすことであると考えています。そして、この自己同一性を維持・確立していくためには、高齢期における「自己決定」、「自立」、「受容」、「継承」という概念が重要であると考えています。
自己決定とは自分の生活や行動を自分で決めること。自立とは、自分の事は自分ですること。生活自立と言われている概念に近いですが、高齢期においては生活の自立を目指していくというよりは、自分の中で大切にしている行為が自立しているという部分が重要ではないかと考えています。
« Prev
1
2
3
4
5
6
7
8
Next »