講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


6.個人の住宅観の背景と住宅ストック

・30軒のリスト
松村 今日お話いただいたような暮らしに関する考え方は、今回の家を改修されてからいろいろでてきたものですか?
ここにこれまで住んだ家30軒のリストがあります。1947年、物心ついた頃から1999年の今のわが家までです。これを見ると、超高層以外、中高層、低層、テラスハウス、木造、レンガ造りに住んでいます。これまでの住体験が下敷きになって、自分で実践して、それが整理され深まった。家にこまめに手間をかけるとか、お客を呼ぶのは以前からですし、「足るを知る」を座右の銘にしようというのはずいぶん前の話ですから、それが形を取ったということです。
僕は、いろんな国に住んで、言葉をしゃべって、食事をして、マルチカルチャラル人間になっていて、典型的日本人とは言えないかもしれません。海外だけでなく日本の中でも都市文化も田舎文化も、そんな文明的背景が混ざっていると思います。
個人にとって一番いい家というのは、個人の経歴から来るけれど、一方でそこの土地とか風土の中でみんながいいと思う家の型があります。ライフスタイルを、その風土と生活スタイルに合った家に馴染ませていくというのはかなりできる気がします。


・新・住宅すごろくと住宅ストック
鈴木 住宅双六は破綻したと一方ではよくいわれますが、まだ残っているのでしょうか。
中古住宅を見つけて、それを自分の好きなように手間をかけるのは、住宅双六の新しい上がりかもしれないと思います。100年住宅を各世代が新築をしたら作りすぎで、三世代で一人作ればいい。人口も増えませんし、数は足りているので、より現代風にマッチさせるというのが男の甲斐性でしょう。ただし、一所懸命、家に手間をかけて、それを楽しむ。
既に家は余っています。僕は家探しをして、こんなに余っているのかとつくづく思いました。ただ、そこに住むべき適切な人に当たらないのです。家は中古が一般的で、自分で作るものでなくなれば、少し良くなるのではないでしょうか。だから僕は安物の新築は禁止してほしいです。お金がないなら中古で我慢して、新築する時はしっかりと100年は持つ家を作ってほしい。大きさは小さくてもいい物はいいです。


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