講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.生活者としての教訓

・欲求を肥大させないということ
私が生活して得た教訓として、欲求を肥大させないことがすごく大事だと思います。楽をしたい、暑さ寒さをしのぎたい。もちろんそれはいいのでが、本当に必要な欲求とコマーシャリズムによって作られた欲求に分けてみてはどうかと思います。「あなたはこんなに不愉快でしょ。だからエアコン要りますよね」ってどんどん迫られても、それを「いや要らない」と言えるように、自分で押し戻せるかどうかが大事です。「足るを知る」という古い言葉がありますけども、そういう気持ちを持つことがエコライフにはとても大事じゃないかなと思います。
これを普遍化するには、昔は宗教とかもっと非常にベーシックなところでの家庭の教えがあったと思います。そんなに無駄遣いしちゃ罰当たりますよ、とか。だけど今はお金さえ払えば何をしてもいいような風潮があるでしょ。僕は「金払っても泥棒だ。」ってよく言うのです。誰から盗んでいるかというと、それは途上国からかもしれないし、将来の世代からかもしれない。さらに余計なお荷物を押し付けているとも思います。今は合法的なことでも、人類とか文明全体でみるとよくないことがある。それはやはり哲学なり宗教なり、倫理観か何かでもう少し組み立てなおす必要があるのじゃないかと思います。

・手間をかけるのを楽しむ
ちょっと視点を変えて、便利さの反対に、もう少々の不便とか手間をかけることを楽しんだらいいのではないかと思います。できることなら家族とか仲間とかと一緒にそれを楽しむ。ファーストフードの対語のスローフード。スローフードの類語としてスローライフ。そういうのがようやく市民権を得てきつつありますが、私は特に住まいの中で実現できるといいと思います。
例えば廃品利用で何かを作るのはかなり知恵がいりますよね。その辺にころがっている材料と、自分のいるものを結びつけるのは、知能ゲームでおもしろいわけです。さらにエコペイントのような、耐久性はあまりないけど、それを土にまいても何も害がないといったペイントを使いますと、色を塗るということが非常に楽しくなります。他にも料理をするとか、家でミシンで作り物をするとか。

・お客を家に呼ぶ効用
私は外国生活の習慣にちょっとかぶれているかもしれませんが、西欧流に家で客をもてなすのはとてもいいものだと思います。結婚したばかりの頃のフランス在住経験から、そういう家庭にしようという合意ができて、よくお客を呼びます。
お客を呼ぶということは自分のライフスタイルを見せることです。見栄があるし、ちょっとでも気持ちよく過ごしてもらいたいし、褒めてもらいたいし、家の中を整えたくなります。掃除は最低限として、気に入った器でお茶を出すとか、それはスローライフの一環かもしれません。私の場合は、欲求を抑えるということと、来客をするということが矛盾なく、心の豊かさという共通項で結ばれていて、物質的な満足は追求しないところを、誰かと一緒に何か手作りするとか、お客さんを呼んで楽しむとかの心の満足で補っているのだと思います。


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