講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』



2.現代家族の家族意識

・「できちゃった婚」の急増
 近年「できちゃった婚」が驚くほど増えています。2000年の出産の内25%ができちゃった婚で、18歳以下の出産になると80%という数字になります。耳を疑うような話ですが、実際まわりで子供ができたという話を聞くときは、必ずと言っていいほどできちゃた婚なんですね。 東大松村研究室での講演の様子
ここからまず見えてくることは、妊娠が結婚へのきっかけになってきたということです。結婚→妊娠→出産というこれまでのステップが崩れ、産むことへの意思や決意が省略されたまま出産を迎えるようになってきているのです。
また、18歳以下の若い人たちの場合、ほかならぬ相手と自分という、排他規定的な対意識が形成されていない状態にもかかわらず、性関係が先行しているということです。妊娠して初めて、相手と一緒になろうという対幻想が成立するという状況が生まれてきています。
こういう状況に漠然と気づき始めたのは1986年頃です。この頃、「自己の性的身体を恣意的に使うという段階を獲得した」といったことを書いたことがあります。われわれはようやくそのことに気づき始めており、気づき始めたときには相当深く浸透していたわけです。
性的身体を恣意的に使うことができることの背景には、本来避妊技術を自分のものにすることが条件になります。つまり、避妊技術を修得して初めて、自分の性的身体を自由に駆使できるのです。
ところが、戦後の日本の場合、避妊よりも中絶が先行するという非常に特殊な展開を見せてきました。ヨーロッパなどでは、時間をかけて徹底した避妊技術の普及を行い、それでも失敗した場合の最終手段として中絶が行われます。それが正当な対応だと考えられますが、日本には依然として中絶に対する抵抗感のなさがあるように思えます。
18歳未満のできちゃった婚では、虐待が起こる可能性が高くなります。経済的な問題を別にしても、今まで一つ屋根の下に住んだことのない者同士に、まったく新しい生命が入り込んできて、なおかつ育てるというが18歳の子供に出来るわけがありません。
したがって、なんらかのバックアップが必要になりますが、現実にはできちゃった出産の子供は、虐待に至る前に捨てられてしまいまうことが非常に多いと言えます。本来なら出産した子供達の親が面倒を見てあげれば良いのですが、なかなかそうならないので、乳児院に委棄され、2歳を過ぎると養護施設に移されてしまいます。
このようにして、次々に場所を変えられていく子供の運命を考えると、子供たちが「まともに」育っていくことは非常に難しいと思います。


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