講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.当世書店事情
松村:  根木さんは本屋専業になって10年以上になるそうですが、その間、451ブックスのような存在は増えてきたのでしょうか?
根木:  増えていますね。ただ、そういう人達が繋がる仕組みはないんですよ。イベントで知り合ったりお客さんが繋いでくれたりはしますが、仕組みがあるわけではない。従来の新刊書店は日販会やトーハン会といった横の繋がりを持っていますし、古本屋には古書組合があるけれど、僕たちのような本屋はどちらにも属してないんです。
鈴木:  全国組織のネットワークがあるわけではないんですね。10月末に開かれる第3回瀬戸内ブッククルーズのパンフレットを見てると、「ミシマ社」とか「ガケ書房」(ホホホ座)のような有名な本屋も来るようなので、てっきり繋がる仕組みがあると思ったのですが…。
根木:  このイベントの出店者全てを知っているのは僕しかいないんです。451ブックスは、色々なイベントに顔を出しているので、その関係でお誘いをしています。ちなみに本屋のイベントでは福岡の「BOOKUOKA」が有名です。それから今年が最後になりましたが「ブックマークナゴヤ」も知られた存在です。
松村:  他の業界に例えると、農業と似ているかもしれませんね。従来の農家は農協によって組織化されていたけれど、エンドユーザーと直接結びつくことができなかった。451ブックスのような本屋は、ファーマーズマーケットに直接売りに来る農家と近い感覚のように思います。
根木:  本屋の数自体は減っていて、最盛期には2万店あったのに今年で1万店を切る状況です。どこにでもあるような本屋はドンドンなくなっていて、個性的なお店が残っています。
松村:  本屋さんの仕組みも硬直化していますよね。そこにアマゾンみたいなものが現れて、単に取次の販売チャネルに過ぎなかった本屋は吹っ飛んでしまう時代になっている。となると、これからの本屋は、生活者に近い立場の本屋と極端に大きい本屋とに分かれていくんでしょうか?
根木:  本が売れない時代であることは確かで、特に雑誌が売れていません。本の売上げは毎年5〜10%の間で落ちていますが、雑誌は間違いなく10%ずつ落ちています。少し前までは付録付き雑誌が伸びていましたが、もうダメですね。しかし、唯一伸びているのが絵本なんです。少子化で子供が減っているので、普通に考えると売れないはずなんですけど。





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