講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3.地域に開かれた団地の記憶
松村:  通常のディベロッパーだとフェンスを周囲に巡らせてしまうと思いますが、南側の前面道路に対して思い切って開放的にしていますね。デッキもきれいに掃除されているし、うまく使われていそうですね。
土山:  居住者の方だけではなく近所の方も自然に活用されているようです。散歩中のご高齢の方がちょっと腰を掛けておられたりするところもよく見かけます。わざわざ敷地の中を通って行かれたりする方もいらっしゃいますね(笑)。団地が地域の中で果たしてきた役割を垣間見る思いです。セキュリティ上心配な面もあったのですが、特に問題は有りません。これだけオープンな構えなのでかえって死角がなく抑止効果が働いているのでしょう。
西田:  フェンスを巡らして閉鎖的にするとかえって居心地の悪いスペースになったりしますからね。
土山:  壁面緑化も試みましたが、これはうまくいきませんでした。でも来年もまたチャレンジしたいと思っています。建物は中層の壁式RC造で、元来耐震性の強い構造となっております。階段室部分にサッシを入れて内部空間化していますが、外観の変化としてはこれが最も大きなものになります。

各室の机・ベッドは新たに設置したものです。和室を洋室に変更する程度のことはしていますが、間取の基本構成は旧来のままとしており、各部屋のキッチンも天板などは極力生かすなど、使えるものは使うという方針で改修を進めました。トイレは3部屋に対して1つあります。シャワールームは1階の共用ラウンジ周りに設けています。
松村:  これだけ個室同士が近いと、お互いの生活音が気になるように思いますが。
土山:  お互いの存在を感じながらの生活である点は、ご契約時に了解の上入居いただいております。隣人間のコミュニケーション次第ということもあり、特に大きな問題とはなっておりません。
松村:  向こう側のもう1つの棟はどのように使われているんですか。
土山:  中央大学が寮として利用している棟もプランは同じです。3室構成の1ユニットに、アジア・欧米・日本という学生の組合せ方をされているようです。日本人に対して特に賃料が安いというわけではないようなのですが、日本にいながら国際交流ができるということで、優秀な学生さんが集まっているようです。そうした生活の中で学生が人間的に成長するようでして、ある種の人材育成の場になりうるという評価も生まれてきています。



前ページへ  1  2  3  4  5  6  7  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP