講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


5.越前浜の行事と住民との交流
松村:  昔からの集落なので様々な行事があると思いますが、参加されるのでしょうか。
星名:  インタビュー風景 自治会に入ると基本的な義務が生じます。まず「万雑費(マンゾウヒ)」という町内会費のようなものを年2回納めます。それを含む色々な収益をもとに集落の予算が組まれ、様々な行事が行われます。行事によっては、時に労働提供もします。例えば春のお祭りの運営は厄年の人の当番になっていますが、準備や片付けは地区の組ごとに分担します。また側溝普請と呼んでいますが、年2回の側溝掃除などもありますし、海岸近くを含む集落内一斉清掃もあります。その他にも神社の氏子の集まりもあります。
西田:  すぐに受け入れてもらえましたか。
星名:  私はそんなに苦労した覚えはありません。もっとも最初の2、3年はほとんど交流がありませんでした。住んではいるのですが一年間の半分以上が出張か外出でしたから行事に出ていない。一年くらい経って側溝普請に出たら、今日から仲間入りという感じになりました。
鈴木:  大家のおばあさんから言われたりしなかったのですか。借りる以上は自治会行事に参加してくださいとか。
星名:  特に言われませんでした。出なかったら2000円を支払う取り決めになっているので、当時の私は仕事だから分かってもらえているのかなくらいの感覚でした。でもそれは間違っていました。また実家が農家だったこともあって、集落の雰囲気は分かっているつもりでした。ただ、実家には高校生までしかいませんでしたから、本当のところは分かっていなかった。今思うと村の行事に対する責任がピンときていなかったことは確かです。
西田:  ずっと家を空けていることに文句は言われなかったのですか。
星名:  言われませんでしたね。興味津々で訪ねて来た人もいましたが、基本的には村の公の場に出ないと集落の人とのお付き合いは生まれない。引っ越してきたときに大家のおばあちゃんから「五人組には挨拶に行ったほうがいい」と言われて、一緒に挨拶に行きましたから、その範囲は顔見知りになっていました。そうした近所のおばあちゃんたちから「神棚に餅上げてくれ」とか「雨樋が外れたから付け直してくれ」と頼まれる程度のお付き合いでした。
佐藤:  その五人組とはどういった集まりですか。
星名:  付き合いがある近所の5軒ということです。以前は相互扶助や相互責任の間柄だと思います。今となっては、親密なおつきあいがある間柄の表現の一つですね。
西田:  越前浜の「文化芸術部長」の肩書きを持っていると聞きましたが?
星名:  妻の家探しを区長さんにお願いしたことが結果的にきっかけとなりました。新潟市が広域合併をした直後で、その新市の意向を受けて越前浜を含むこの角田地区にもコミュニティ協議会を作る動きが進んでいました。「あなた方のような芸術活動をしている人たちが移り住んでいることをPRしたい。協議会の中に文化芸術部会を作ることにしたから取りまとめてくれ」と頼まれました。その文化芸術部会に参加し始めてから村の人との交流が増えました。それがなければ今みたいにはなってないですね。ちなみに今は広報部長をしています。文化芸術部長は先ほど話に出てきた学芸員の友人がしています。



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