講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3.えっ、4階建て?

松村 考えても見ると、いろいろな雑誌が企画していますよね。読者に建築家を紹介するという試みが。安藤さんは最も有名な建築家ですが、その安藤さんに設計してもらってどうでしたか。中田さんが漠然と持っていたイメージを膨らますような、さすがプロというような点もあれば、逆に自分のイメージとギャップがあった点もあるかと思いますが。
中田 自分で設計することもあると思っていましたから、僕なりのイメージはありましたよ。この細長い敷地に駐車場を設けるとなると1階がピロティ。上がって行くとリビングがあって、キッチンがあって、その横に休めるところがある。まあ、3階部分もできるでしょうけど、2階部分で横に横に広がっていくんだろうなぁって。

一回目の打ち合わせでそんな話をしまして、少し経ってから、いいのができたからって連絡がありまして。行ってみると「こんなんできてんけどな、こんなんは全部ボツや」とけなしている案があって、僕のイメージとそっくり(笑い)。で、次に出てきた案が4階建てのこの家です。
松村 これだけはやって下さいとか、こういう風に暮らしたいとか、ねばったりしなかった?
中田 ちょっと違ってるくらいだったら「いや、横にもうちょっとこうしてくださいよ」とか言えたけど、イメージと全然と違ってたから、もうなんも言うことないなと。むしろおもしろいものができたなと。あとは細かい要求ですよ。風呂にテレビが欲しいとか。そんなんだけですね。

出来上がったときの印象としては、1階のお風呂と便所はほとんど予想通りです。2階のベッドルームも予想通り。3階に上がったときには、意外と眺めがいいけどちょっと狭いなという感じがした。でも、4階に上がるとパカンと大きな窓があって、圧倒されるような景色が広がっている。3階で感じた疑問の答えがここに用意してあったのかっていう驚きはありました。
西田 ちょっとプライベートな話なんですけど。一生独身だから自分専用の家を建てようというのと、もしかしたら2人になるかもしれない、3人になるかもしれない、と考えてつくる家とではプランがかなり変わってくると思うんですよ。たとえ安藤さんだとしても。そういうことは、想定としてあったのかどうか?
中田 それは悩みどころやったんです。区画された部屋が少ないですから、これじゃ住めないんではないかと思ったんですよね。階段を直階段にするとか対処があるんじゃないかとも思ったんです。でも、2人くらいなら子供は3階に住めると安藤さんの図面に書いてありまして…。結婚しても大丈夫だというわけです。それで、何とか住めんことはないかなと。もっとも、収納だけは増やしてもらいましたが。

あれっ、こうやって思い起こしてみると、先のことはあまり考えてなかったのかもしれませんね。と言うよりも、やっぱり予想できないんですよ。
松村 どの部屋にいることが多い?
中田 4階はもちろんですけど、意外と3階にも居ますね。お客さんに見せる模型を作ったり、パースにきれいな色を付けたりするんです。何個も何個もココで。僕の担当業務は営業なので、会社でやってたら遊んでいるように思われるんですよ。

でも、どっかの階にずっと居るというわけでもなく、上がり下がりしている感じがありますね。この前足くじいたんですけど、すごい大変でしたよ。もうよたよたしながら階段を上り下りしてたんですけど、階段室がコンパクトでよかったって感じで(笑い)。
松村 中田さん、いちいち話に落ちをつけなくてもいいですから(笑い)。話を元に戻して、縦に移動するのはやせる意外になにかあるの?
中田 あるのかな。何か生活しているなっていう実感はありますよ。実家とか行ったら、ホントにごろごろしている感じなんですよ。動いてもこまごま動いている感じ。この家は平面的には4m×4mですから、一つのフロアはコンパクトなんですね。実際、トイレは1200mm×800mmくらいなんですよ。使ってみたらそんなに不便もないですし、さすがに安藤さんは数多くの住宅を手がけられているだけあるなって。でも、生活としては階を渡り歩きますから、この家で生活していると動きが大きくなるんですね。



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