郊外戸建て住宅における喫緊の取組の必要性と将来展望
(4) 喫緊の取組の必要性と将来展望について
私は厚労省で社会保障に取組んできたが、その仕事の性格上、常に最低限25年以上先を考えてきた。住宅団地のまちづくりに関しても超高齢化とともに、人口減少に転じた今、中長期的な将来のデザインを考えることが喫緊の課題である。
戦後の日本経済発展のムーブメントで、団塊世代は様々なことのブーマーの役割を果たしてきた。これまで形成された一戸建ての住宅団地における地域住民の最大の集団は、団塊世代である。京都大学廣井良典教授による、AIを用いた予測分析から、今後人口減少する日本の国土利用を都市集中型構造とするか、ある程度分散型にするかはここ10年以内の間に決断しなければ、もう方向性は変えられないだろうと言っておられると記憶している。人口が密集市街地に集中する傾向になることは、更なる出生率低下にもつながる。
団塊の世代が2035年には、85歳を超える、85歳以上の要介護認定率は6割程度であり、今のまま放置すれば、その頃は、経済発展の過程の職住分離で整備された団塊世代が住む多くの住宅団地が衰退することが確定し、二度と戻らないであろう。まさしく、国土利用の方向を10年以内に集中か分散か決する必要があるという話と、以上述べた団地の再生の必要性とは、軌を一にしている。
ヨーロッパの国々の住宅事情を見ると天井の高い比較的大きな部屋で皆が住んでいるように見える、これは、基本的には経済が繁栄した時代に形成した資産や町を継受したからだと思う。日本では、戦後の経済発展でそれなりの部屋数の住宅と整った街並みの団地がサラリーマンの夢と努力を土台にして多く形成された。これらは国富といえるものであり、人口が減少する中ですべてを残すことは不可能であるが、今まで述べてきたような民間認証事業を発展させながら、良い住宅団地を残すことは、国の政策としても必要であることを訴えたい。また、アメリカのHOAのように、住民が主体ということまではいかないもでも、まちづくりに住民が合意しつつ、民間事業者が、認証事業を活用しながら投資のリスクをマネジメントしつつ、国富の保全に取り組むことが必要である。
ISO (国際標準化機構) では高齢社会に向けた産業の標準化の作業を行っており、その基本方針 (IWA18) については、IOGの意見が取り入れられたという経過がある。ISOでは製品 サービス基準だけでなく、様々なアセット形成におけるマネジメントシステムを重視している。ISOでは「全世代のまちづくり」という形で高齢化を意識したまちづくりの標準化のガイドライン作りにも着手している。このような状況の下で、今検討中の認証事業は、ISOのマネジメント基準を念頭において、住民と民間事業者が主体的にかかわりながら、地域人口 (高齢化を含む) の予測に基づく一定のアセスメントを事前に行うことを必須としており、将来は、このような一連の手法をアジアの急速な高齢化に向けて海外にも発信したいと考えている。
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