郊外住宅地再生フォーラム2022
暮らしを豊かにするプロジェクトデザインとマネジメント

(2) 上郷ネオポリス (横浜市栄区) の取組み (大和ハウス工業(株)　瓜坂氏)

1) これまでのまちづくり

• 上郷ネオポリスは面積46ha、人口約2,000人、世帯数868世帯のまちで、高齢化率は50%を超えています。本日は、上郷ネオポリスでのまちづくり組織をこれまでどのようにつくってきて、これからどのような組織立てでまちづくりを進めて行くかを軸にお話したいと思います。
• 上郷ネオポリス自治会 では、地区の様々な活動をされている団体のリーダーで組成される特別委員会として、「上郷ネオポリスまちづくり委員会」が組織されました。そして2016年6月に、まちづくり委員会の次の段階として、「まちづくり協議会」が組織されました。「まちづくり協議会」は弊社大和ハウスを含む企業が「協議会構成員」となり、「まちづくり委員会」と様々な課題を共有し、助言・提案を行い、共にまちづくりに取り組む会議体です。「まちづくり協議会」で検討したことを自治会にはかり、実現に向けた取組を行い、横浜市・栄区と情報共有してまいりました。
• こうした取組を通じて、住民だけではできなかったこと、そして企業だけではできなかったこと一つ一つについて、共創を通じて前に進めることができました。そして弊社がハブになって、東京大学などとの連携研究を行っています。また横浜市と弊社は2020年に郊外戸建住宅団地の持続可能なまちづくりに関する協定を締結しました。このように産学官民の連携のシステムを構築してまいりました。
• 2019年10月にはコミュニティ拠点の野七里テラスがオープンしました。住民の方々に利用いただくだけではなく、住民が働き、あるいはボランティアとして参加するといった、目に見える形でのまちづくりが進んでいます。

2)これからのまちづくり

• 我々がこれから目指している仕組みは、タウンマネジメントにおけるサービス・商品を構築する、住民の方々を中心にした一般社団法人を立ち上げ、弊社として運営支援・共創活動を続けるというものです。住民の相談を、一般社団法人として住民が受けて、企業群がサービス提案をさせていただく組織形成を考えています。さらに行政側も、上郷ネオポリスや周辺の公共施設や公共の遊休地における、コミュニティ拠点や介護施設、コワーキングなどの活用に向けた規制緩和などを進めていただければと考えています。住民のニーズを企業のシーズで応えていくだけではなく、企業のニーズと住民のシーズで応えていただき、住民の方々の課題を最優先しながら、新たなサービス・商品開発につなげていく、双方にメリットのある形をつくっていくことを考えています。
• 自治会館や野七里テラス・和テラスからさらに発展し、これまでに無かった機能を担う、新しい拠点の整備を弊社では考えています。子育て世帯の交流の場や、住民相談の場、働く場、防災拠点などを提供し、弊社としては展示場やコミュニティラボとして使わせていただくことを考えています。よくB to C (Business to Consumer) と言われますが、我々が考えていることはB to C to C として、住民の方々が住民のニーズを吸い上げて、企業がバックアップするイメージです。そしてまちの価値をあげるクラブハウス的なものをつくっていくことを考えています。
• 住民の方が介護施設などに入居した後の空き家については、学生向けシェアハウスや、子育て世帯向け賃貸住宅、熟年世帯向けにダウンサイジングした住まいなどへ活用し、住み継ぎシステムが構築されるのではないかと考えています。
• この３年間の活動で分かってきたことは、①まちづくりの主役は住民であり、その核となるのは元気な高齢者、それがフレイル予防にもなること、②急に高齢者になったわけではなく、それぞれの家族の半世紀にわたるドラマが背景にあること、③企業が行うべきは住民を支えることであり、まちづくりではなく人をサポートすること、④高齢化が急激に進んでおり、あと５年後には手遅れになるのではということです。住民が本気になって取り組むよう、モチベーションを上げるように我々も関わっていくことしか、まちの再生はないのではと考えています。