郊外住宅団地の実態と再生

「住宅団地の実態調査
 〜『住宅団地の再生のあり方に関する検討会』報告より〜」

 

【質疑応答・意見交換】

成熟研委員:郊外住宅団地再生に色々と関わってきましたが、団地によっては再生の可能性のあるところと、可能性の低いところがあります。可能性の低いところについては、いかに痛みなく消滅するかが課題になるかと思います。痛みのない形での消滅について、何かご知見があれば、教えていただければと思います。
山下室長:非常に難しいお話ですが、コンパクトシティ化の動きの中で、例えば立地適正化計画における居住誘導区域に含めていくのかいかないのかという考えが参考になるかと思います。団地の10年先20年先を考えた再生の色々な取り組みが進められているところがありますが、そうではないところをどうするかは本当に難しい問題で、移転などの支援策を講じつつも、色々なサービスを急に止めるわけにもいきません。それこそこれから関係者がいろいろ知恵を絞りながら取り組んでいくことしかないんじゃないかなと思います。
吉田座長:住宅市街地総合整備事業住宅団地ストック活用型の募集状況はどうなっていますか?
山下室長:応募はまだそれほどありません。始まったばかりの事業で、対象の地方公共団体が手をあげるには多少時間がかかるということもございます。
吉田座長:我々民間企業の議論で時々あげられることは、郊外団地の自治会の方とか、当該の地方公共団体との出会いの場がないということです。ショッピングセンター跡地の再生など、地域が主体的に提案してくださると良いのですが、地域が民間企業1社と契約すると、なぜそこに頼んだというお話になります。地方公共団体や自治会で何か話をまとめていくときに、何かアドバイスいただけるような制度があるといいと思います。
山下室長:先ほどのアンケートにもありましたように、地方公共団体によって温度差があるというのも事実でございます。国交省のスマートウェルネス推進事業に団地再生型というものがあり、民間団体に直接手を上げていただいて、国の方から一定の支援をさせていただく仕組みがありますので、場合によってはそちらから動くというやり方もあるのかもしれません。ただ、長い目で見た時に地方公共団体との関係というのは必ず必要になりますから、そのあたりをどのように持ちかけられるかというのは、その場その場で考える必要があるかなと思います。
園田教授:アンケートで様々なエビデンスが出てきて、本当にいろんなことが分かったと思います。この国総研の予測ツールはとても良いと思ったのですが、この中に公示地価は入っていますか。
山下室長:このツールは国調をベースに町丁目単位の人口予測を行うもので、公示地価は入っていないと思います。
園田教授:データを上手に使うと公示地価を入れた分析ができるのではと思います。今日のデータでも高齢者の定住率は高いということが分かりますが、それはポジティブな要因ばかりではなくて、高齢者の暮らす築40年以上の住宅の資産価値の評価はほぼゼロで、住宅団地開発時に一斉入居が行われた頃の公示地価と現在の公示地価から、居住者にキャピタルゲインが多少ともあるのか、やはりキャピタルロスが大きいのかを見れば、高齢者が動くに動けない状況がよく分かるのではと思います。それはそれを購入した居住者の責任なので、居住者自らが動き出すかによって地域が生き残れるか生き残れないかというのが決まると思います。
 最近は住宅団地の都市再開発法適用なども検討されていますが、住宅団地における再開発や不動産マネジメントをやると可能性が大きくあがるのではと考えています。地方創生の次が団地再生ということで、その波が今どんどん都市に迫っていますが、民間デベロッパーやハウスメーカーが郊外住宅団地に戻るには敷居が高いというあたりがボトルネックになっていると思います。
 地方創生では総務省による「地域おこし協力隊」がすごいことになっています。これは都市から地域に移住した方に、地方公共団体が1年以上3年以下の期間に「地域おこし協力隊員」として委嘱し、地域協力活動が進められるものですが、NPOや株式会社が地方公共団体から請け負って、IT専門家や海外の大学を出た人が安定的な雇用身分を持って地方に入るということが行われているところがあります。住団連版地域おこし協力隊を組織して、ユニットで派遣とマネジメントをやると、とても面白いのではないかと思います。
山下室長:ありがとうございました。大変参考になりました。一点目の地価公示のお話は確かにその通りで、考えてみたいと思います。2点目3点目もおっしゃる通りで大変参考になりました。個々の会社が地域に入るには色々難しいことがあるとすれば、それが住団連になるかどうかは別にしても、多少ニュートラルなところが間に入るのはひとつのやり方かなと思います。


以上