講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


質疑


喜名 最近デザイナーズマンションというものがありますが、売る側がデザイナーズマンションとして載せてくれと言われているのか、編集側がそう解釈しているのか、どうなのでしょうか。
大久保 私どもがデザイナーズマンションと言う時は、著名な建築家が設計したものを言います。
松村 最近インテリアに関してもデザイナーズ志向が増えていますね。海外のデザイナーは特に。
大久保 以前は建築家の方々はマンションを設計することは無かったのですが、最近はマンションの捕らえ方が変わりましたね。
松村 以前は隠れてやっていましたね。

鈴木 近所付き合いに関して、隣近所には何も期待していないのでしょうか。
大久保 超高層や夫婦のみの方が住まれる場合は、あまり近所づきあいをしたくないと思われる方が多いです。
松村 子供がいないと付き合う必然性が無いですよね。
大久保 今は子供に代わってペットがその役割を担っていますね。
鈴木 同じマンションで仲良くなることはあるのですか。
大久保 同年代の子供がいるところは別ですが、それ以外は無いでしょうね。
松村 私の場合は隣の住人の子供と私の子供が同じ学年なので、近所付き合いはあります。学年が違ったらもう無いでしょうね。



大久保恭子さんの話を伺って考えたこと



 4人家族の購入するマンションの平均価格とシングル女性が購入するマンションの平均価格の間に大きな開きがないという話は、「可処分所得の多寡からすれば当然か」と後追いで納得できたが、正直少々驚いた。自らの貧しい経験の範囲で、「一人暮らし=間借り或いはワンルーム」と型にはめた理解をしがちだったが、今後ますます増えると予想されるシングル居住は、それ自体多様なものであると認識しておかなくてはまずそうだ。(松村



 女性の社会進出に伴う住宅の変化についてはずいぶん以前から議論されてきたが,大久保さんの解説でその大きな現実の動向を目の当たりにした感がある。なによりも居住地の選択自体がここまでドラスティックに都心=「働く場の近く」へと志向されているのに驚かされるが,考えてみれば働き続けるための切実な要求であり,その他「夫婦だけれど個も大切」等の住居への要望もいちいち納得できる。ただ,こうした需要を受けとめるのが,結局新築の大規模分譲(超)高層マンションであり,結果として,地域とあまり関係をもたない単身・夫婦のみ世帯という単一階層の社会が生まれつつあるのが気になるところである。社会はもう少し多様な住居(賃貸,中古,小規模)を用意すべき ではないか。(鈴木



 独身女性に限らず、都心居住回帰は本物であると思えた。そもそも潜在的なニーズがあったとも思える。学生時代、東京の都心に10年ほど住んでいたことがある。地下鉄の表参道から5分ぐらいのところで、行きつけのスーパーは紀ノ国屋という便利な立地であった。6畳一間の木造賃貸で、居住性能は問題外であったが、豊かな都市機能がそれを十二分に補完してくれていた。フットワークが軽くなり、とにかく住んでいて楽しい街であった。東京の都心は以外に住環境としても優れているのではないだろうか。それが、自分の手が届く範囲で購入できるのであれば、買わない理由がない。消費という面ではいつの時代でも女性は時代の先端を行く人が多い。今回の現象は一過性ではなく、都心居住を根付かせる契機になると考えられる。(西田



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