講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』
旅する大工とRe SHIMIZU-URA PROJECT-株式会社いとうともひさ
伊藤智寿さん
株式会社いとうともひさ代表取締役、NPO法人ゴンジロウ塾長。神戸芸術工科大学卒業後、大工修行を経て独立。Re SHIMIZU-URA PROJECT でSDレビュー2023に入選(朝倉賞受賞)。
大城サンチェスカルロスフランコさん
百弦琴(サントゥール)のプロ・ミュージシャン。ペルー出身。みかんの援農ボランティアとして和歌山に訪れ、現在は伊藤さんの下で見習い大工として修行中。



1. 大工になるまで
2. 旅する大工の始まり
3. 弟子を育てる
4. Re SHIMIZU-URA PROJECTの始まり
5. みかん援農からの移住
6. 冷水浦集落との関わり
7. 冷水浦の大工=大家として
8. 暮らしと共に建築をつくる
9. 5年ごとに座標を定め直す
10. まとめ



1. 大工になるまで
松村:  伊藤さんは和歌山県海南市の冷水浦(しみずうら)を拠点にしている大工さんです。「旅する大工」として仕事をしながら、「Re SHIMIZU-URA PROJECT」という空き家改修プロジェクトに取り組んでいます。既に4棟の改修を手掛けていて、13軒の空き家を管理しています。2022年には「チャイとコーヒーとクラフトビール」というカフェ・ビアバーをオープンしました。まずは大工になるまでを伺いたいと思います。伊藤さんは海南市の出身ですか?
伊藤:  妻は和歌山出身ですが、僕自身は大阪で生まれ育ちました。神戸芸術工科大学に進学しまして、その頃はアトリエ設計事務所を志望していました。かっこいい建築の設計に憧れ、それこそ建築関連誌を毎月購入する学生でした。その一方で、建築をみんなで楽しむようにしたいと考えていて、結局4年生の頃に大工になることを決心しました。でも学生にはその方法が分からないじゃないですか。それで工事現場で働けば大工に繋がると思い、1年間ほど防水の職人として働きました。
松村:  それだと大工にたどり着きそうにないですね。
伊藤:  ひたすら防水塗りをしましたが、ハケからトンカチに変わることはありませんでした(笑い)。半年ほど経って、この当たり前の事実に気付いて、同じ現場の電気屋さんに話したんですよ、自分の気持ちを。そうしたら大工の親方を紹介してもらえることになり、その方の工務店で1年間ほど働くことになりました。




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