講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


3. 震災後の資材高騰
黒岩:  震災後にはよくあることですが、工事費が急騰しました。建設会社が、作業員を手配したり材料を調達したりするまでに、何社も介在するようになってしまった。3つの建設会社に見積りを依頼したら高額な工事費が出てきて、とてもじゃないけど納得がいきません。意を決して幼馴染みの鉄筋屋などに分離発注することにしたら、1/4程度に落ち着きました。ヴォールト屋根に使ったCLTは愛媛県で製作したものですが、やはり直接発注したら1/6で済みました。
松村:  そんなに変わるとは驚きです。その分のリスクを黒岩さんが背負ったわけですね。
黒岩:  建物条件を踏まえると鉄骨造が素直かもしれませんが、少しでも安くしたいと考えて木造にしました。木造の方が、構造計算に時間が掛かりますが、工事費を抑えられます。ワークヴィジョンズの西村さんは、建物と街の関係を深く考えている建築家です。地域の方々に使ってもらえる銭湯を作りたいので、設計をお願いするなら西村さんがふさわしいと思いました。
鈴木:  施主として、どういった注文をされましたか?
黒岩:  細かい注文はしなかったですね。マンションをワンルーム化して暮らしていたので、この家もそうした間取りが良いと判断したようです。妻が沖縄出身なのでわざわざ琉球畳のスペースを設けてくれましたが、これは子供と遊ぶのに良かったと思っています。ちなみに、ヴォールト屋根になっているのはロフトを配置するためです。CLT構法の金物は高くつくので、極力使わない工夫をしています。新型コロナが発生する前のことですが、カザフスタンに出張する機会があったんです。金物が普及していないので、向こうでは日本と同じく込栓等を使用していました。この建物でもそうした嵌合接合にしたら、金物の半分くらいのコストに抑えられました。




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