講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


2. 織機を分解する/光を導く
西村:  通常のプロジェクトはここで終わりですが、そうしたくないという思いが出てきて、今後どうしたらいいのか悩む山アさんと一緒に、この場所と向き合うことになりました。建物を実測して図面を起こしたり、修繕案を作成していたところ、山アさんが織機の処分を決意しました。振り返ってみると、山治織物工場での取り組みが本格化したのは、織機の処分に取りかかった2007年だったと思います。
山ア:  伝統的和装織物には支えてきた織手と着る人の長い間の物語など、まだまだ何か可能性があるはずだと自負し、可能性を探りつつも本当に考えあぐねていました。次第に、アパートやマンションに建て替えても成り立たないことが明らかになりつつあるとき、西村さんたち桐生再演の活動を知りました。西村さん達のアートの視点から何かやっていく道があるんじゃないかと思ったんですね。西村さん達に背中を押して頂いた感じです。確たる見通しはないとしても、何か見つかるかも知れないと想いました。
西村:  織機は高さが梁を超えるほどの大きさなので、山アさんと一緒に分解していた時は、工場は真っ暗でした。僕としては天窓の光を床まで導きたいという思いで分解していましたが、実は山アさんを含めて誰も織機がない工場を見たことはなかった。建て増しされながら現在の建物の姿になったので、がらんどうの状態になったことがなかった。ですから、織機を分解することは、誰も見たことのない新しい風景を出現させる行為でもあったんです。




前ページへ  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP