講演+インタビューシリーズ『ライフスタイルを見る視点』


4.ワーク・イン・レジデンス
大南:  アーティスト・イン・レジデンスに自費滞在型を加えた背景には、ビジネス化を図ろうという狙いがありました。ビジネス展開には情報発信が必要です。そこで2007年度から2008年度にかけて、総務省の「地域ICT(情報通信技術)利活用モデル構築事業」を使って「イン神山」というウェブサイトを作りました。地デジ化による難視対策の一環で、2005年には神山にもCATVが整備されていたんです。光ファイバー網が引かれたので、テレビだけでなく高速インターネット回線もついてきていたわけです。

ウェブサイト開設の目的がアートでビジネスを起こすことだったので、アート関連の記事を作り込みました。ところが、意外にもそうした記事よりも「神山で暮らす」の方が5〜10倍のアクセスを集めた。「この古民家は2万円で借りられます」とか「この古民家は痛みが激しから薪ストーブを入れても大家さんが許してくれます」といった物件情報に反応して、ポツポツと移住する人が現れた。
松村:  神山の場合、移住者の募集方法がユニークですよね。
大南:  「この建物はパン屋さん」とか「この建物はデザイナー」とか、これからの町に必要な仕事を空き家ごとにタグ付けして移住者を募集しています。これは、ウェブサイトを制作した西村佳哲さんが提案してくれた「ワーク・イン・レジデンス」というアイデアが始まりです。

僕たちがどういう思いでウェブサイトを作りたいのか、グリーンバレーの20人程が集まって西村さんに話を聞いてもらいました。僕たちは色々な意見を言いましたが、「若い人に移住してもらいたいけど、仕事がないから来てもらえない」という思いが心の底にあると感じたそうです。でも、地域に仕事がないなら仕事を持っている人に来てもらえばいいというわけです。
松村:  この地図には上角商店街の2010年の様子が示してありますね。白ヌキの建物は空き家ですか。
大南:  1955年には38店舗が商売をしていたのに、2008年に営業しているのは6件だけになっていました。その他は空いていたり住宅になっていたりです。ワーク・イン・レジデンスを始めてみると予想外の反響だったので、「移住者と空き家のマッチングで住民の望む商店街を実現できるんじゃないか」と考えるようになりました。能天気な人間が多いものですからね(笑い)。




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