ライフスタイル考現行


4.本との出会いの作り方
鈴木:  本への携わり方として、古本屋以外の選択肢はなかったのでしょうか。
中尾:  本当は貸本屋をやりたかったんですよ。だけど、日本では昭和59年に貸与権が設けられたので、貸本業を新たに始めるのであればこの権利に関するノウハウが必要です。新刊本を買取方式で仕入れたりしたら、南阿蘇では経営的に厳しそうですから、自ずと古本屋に落ち着きました。委託方式という選択肢もあり得ますが、この場合は大手取次店を通す必要があります。そうした問屋と取引するのは、僕たちにはハードルが高くて実質的な選択肢になりませんでした。もっとも、古本のみに拘っているわけではないので大手取次を介さずに仕入れられる新刊も扱っています。例えば、朗読イベントに来て頂いた方の著書などは、ひなた文庫に置いています。イベントは色々とやっていまして、書初めを開催したり、映画の野外上映を駅舎前の駐輪場で行ったりしています
松村:  古本中心だと、本のセレクトショップという性格が強くなりますよね。
中尾:  基本的には、自分たちが読んでみたいと思う本を置いています。もっとも地元の方から時代小説の要望があったりするので、ネットや古本屋からそうした本も仕入れています。僕たちは時代小説を読まないんですけど。
松村:  中尾さんと同じくらいの世代が本屋を始めていると聞いたことがあります。その場合は古本屋が多いんでしょうか?
中尾:  確かに古本屋は基本的な開業手法の一つになっていて、熊本市内にも僕らと同世代の古本屋さんがいます。でも数としては新刊書店が多いと思います。現在は本屋独自の品揃えが受け入れられるようになったので、おしゃれなヴィジュアルブックやリトルプレスの本を中心に扱ったり絵本のみに特化している本屋が人気になっていたりします。それに雑貨と一緒に本を売っているお店も多いですね。
松村:  ネット購入が広がる一方で、別の流れがあるわけですね。
中尾:  本との出会い方というか、どのタイミングでどういう風に出会ったかによって本の購買意欲が大きく変わるからだと思います。老舗の古本屋さんがおっしゃるには、アーケード商店街で本を広げて売っている一箱古本市のようなイベントと、ちゃんと店を構えて売っているのとでは、全く売れ方が違うそうです。



前ページへ  1  2  3  4  5  次ページへ  


ライフスタイルとすまいTOP