ライフスタイル考現行


6.コロナ禍とゴンジロウ塾
岡部:  以前はいつも学生たちにもう少し長く滞在して欲しいと思っていましたが、なかなか実現できていませんでした。それが、2020年は学生たちが2週間くらい滞在できるようになりました。オンライン授業なので、地域活動をしながらも授業を受けることが可能になった。家庭教師のアルバイトをオンラインでできるようになったことも大きいみたいです。図らずもソーシャルバブル的な考え方の共同生活が、ゴンジロウで行われています。
鈴木:  コロナ禍によって、学生がゴンジロウに来やすい状況が生まれたわけですね。

岡部:  学生が暇になったこともありますが、ここだったら行ってもいいんじゃないかと思うみたいです。私の授業を取っている学生に「よかったら来て」と声をかけたら、先日は韓国の留学生がやって来て「久しぶりに人と一緒に食事をしました」って喜んでいました。毎年、インドネシアの大学とワークショップを行っています。今年はオンラインで実施したところ、何人かがゴンジロウから参加しました。風呂上がりの通りがかりが画面越しに見えたりするので、自分の部屋から参加していた学生にはすごく羨ましかったようです。
鈴木:  オンライン化によって、教室以外の場に身を置いて授業を受けられるようになりました。学生同士が会えなくなったとか、ネガティブなことは指摘されがちですが、オンライン講義がもたらす新しい可能性が、あまり注目されていないように思います。
岡部:  大学のオンライン化がもたらす可能性は大きいと思います。今まで大学がない地域では、大学生の活動が存在し得なかった。だからどうしても活気が出なかったんだと思います。でも現在は、地域に何らかの貢献をしながら東京の大学に通える状況が生まれてきた。これは様々なインパクトを地域社会に与えるきっかけになると思います。

ヘラー, M.(2008)山形浩生・森本正史 訳(2018)『グリッドロック経済 多すぎる所有権が市場をつぶす』亜紀書房
ポズナー E.A.・ワイル E. G. (2020=2018) 安田洋祐 監訳・遠藤真美 訳 『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』 東洋経済新報社
吉見俊哉(2020)『大学という理念:絶望のその先へ』東京大学出版会



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