ライフスタイル考現行


5.10年前に親と同居し始めたCさん −老後の住処として選択された郊外−

[入居年] 親世帯: 昭和40年 子世帯:平成4年
[現在の居住者] 60代の夫婦と母親
[現在の住宅] 子世帯の入居時に木造住宅に建て替え
[ヒアリング対象] Cさん(子世帯男性)

父母の入居の経緯

--最初に入居されたのはどなたですか?
私の父と母が昭和40年に,S社のプレハブ住宅を購入して入居しました。それまでは家族で静岡に住んでいましたが,私が社会人になって東京へ行き,父親が定年の少し前というタイミングでここを買ったのです。このあたりは,G団地でも最初期の販売地区で,43戸が販売されすぐに完売したそうです。しばらくは父母の二人で住んでいました。

--お父さん方は,元々奈良出身だったのですか?
実は両親は奈良に縁もゆかりもないのです。父も母も出身は四国です。

--では,なぜ奈良に?
父が,仏像や古寺が好きだったからです。それで,定年後は寺めぐりがしたいと。

--老後の住処として,ここを選ばれたのですね。
父は長男ではなかったので,四国に帰る必要もありませんでした。実際に入居してからは,電車でお寺を見て回っていたようです。


子世帯の入居

--ご主人は,いつこちらへ引っ越されたのですか
私がここへ引っ越してきたのは,12年前です。そのだいぶ前に父親が他界したので,その後は母親が一人で住んでいました。母親といずれ一緒に住みたいとは思っていたので,私の定年の2年前というタイミングで,こちらに来ました。私も,仏像などは嫌いではないですし。交通が便利なのも良かった。

--入居されたときは,昔のプレハブ住宅だったのですか?
私たちが入居するときに,それまで両親が住んでいた平屋のプレハブにはとても住めないと思ったので,今の木造2階建ての家に建て替えたのです。

--業者を選ばれたのは,ご主人ですか?
業者は近くの建設会社です。父親たちが最初のプレハブ住宅に入居したときにいろいろな不具合があったのですが,S社には頼めず,近くにあったその会社に依頼していました。それ以来トイレが詰まったり,屋根が壊れたりした時に何度も来てくれたので,父がその業者と将来の建て替えを約束してしまったのです。私としてはハウスメーカーの住宅が好きだったのですが,生前の父の約束を破るわけにはいかないので,お願いしました。それ以来,1階で母親,2階で私たちが暮らしています。


現役=社宅,老後=郊外

--こちらに入居する前は,どのようなところにお住まいでしたか?
私は,ずっと社宅に住んでいました。転勤が多くて,東京と大阪の間を3往復しました。同僚たちは,次第にマイホームを建てていましたが,私はいずれこちらに来るつもりだったので,現役時代はそのまま社宅住まいを続けました。私にとっても私の子どもたちにとっても,安住の地とか故郷というのは特定できないですね。だから逆に,定年後に住む場所は好きに決められたのです。


社宅と郊外の近所付き合いの違い

--ご近所との関係は?
周りの家も,子どもが私と同世代で60歳を超えたぐらい。帰って一緒に住んでいたり,帰ってこなかったり。長男はだめでも次男が帰ってきたり。私は,ここに住んでいたわけではなかったので,知り合いはいませんでした。今も,知っているのは向こう3軒両隣ぐらいで,その先の家は知りません。
自分らの世代は基本的に没交渉ですね。子供同士が同級生とか,同じ趣味のサークルに入っているなどのきっかけがないと付き合いも生まれないし。その辺が,私たちがずっと住んでいた社宅との大きな違いですね。社宅では,一緒にマージャンをしたりゴルフにいったりして,否応なく付き合いが生まれていた。ここでは,元々関係がまったくない人が集まっているので,まず接点が生まれてこないのです。


親との同居,子との同居

--将来の予定は?
私にも,息子と娘がいます。息子は30代後半で,今は世帯を持って大阪に勤めている。私が父親に言われたのと同じように,私も息子に,「将来ここに住みたければ住んでよい。ただし,私がもし先にいなくなっても,母親の面倒はちゃんとみろ」と言っています。仕事が一段落ついたら,私のようにここへ来るかもしれません。



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