パネルディスカッション2018
成熟社会の住宅市場とハウスメーカーの取り組み

(3) リフォーム事業への取り組みーオアシス研修

 セキスイハイムの高齢者介護サービス事業の次の展開として、リフォーム事業にこれまでのノウハウを生かすためのオアシス研修を始めています。これはオアシスセンターを活用した現場研修による人材教育です。日常的に介護の現場にいない方が3日間の研修期間で得ることには限界があるため、まずは直接見る聞く触るという現場体験を通じて直感的に知ってもらうということをステップ1としています。そしてステップ2として、現場に戻ってからのリフォーム提案業務に生かせるように、暮らしから住まいを考えるための視点と分析方法を知るというプログラムとしています。
 オアシスセンターには、元気な高齢者から要介護5の方まで様々なお客様がいて、それぞれのサービスの現場で話して触れて知ってもらうという時間を設けています。特に研修プログラムの中に必ず送迎同行の枠があり、高齢者のご自宅がどれほど外出しにくい住環境かを体感することができます。まさにここがリフォーム提案に生かせる貴重な機会になっています。また、現場に触れることで、特に水回りでどのような空間や手すり配置などが重要なのかということを知ることができます。さらに福祉用具を実際に使ってみることで怖さや必要な寸法を体得します。
 最後の3日目午後に、翌日からの現場でのリフォーム提案につなげる演習で仕上げます。研修前に、60歳以上の親族とそのご自宅のプランとその人の基本情報、1週間の生活や趣味嗜好をヒアリングしてもらって、その方がもし要介護2になったときにどのようなリフォーム提案が必要かということを、そのご自宅の図面に書き込んでいただいています。そして研修後に、もう一度振り返ってもらうと、リフォームの必要性について書き込める内容が広がったということで、たった3日間ですが確実に現場を知ることでリフォーム提案内容に幅が広がるということが実証されています。
 そのオアシス研修にはこれまで653名のリフォーム営業を中心とする社内の人間が受けています。3日間現場から離れることになり、お金もとっていますが、レポートを含めてカリキュラムをすべて修了した方には「介護と住まいの相談員」の資格認定証を、お客様とお話するときの説得力を高めるツールとしてお使いくださいということで、渡しています。そして受講者の5割が受講後に契約がアップしたという研修効果が表れています。優秀営業表彰全国第2位の営業担当からの受講者の声では、「対峙するお客様はみな元気ですが、その人たちにこの次のステージはどうなるかということを、自分が分かっていればこうした提案ができるということが自分の強みになり、水回りの契約アップにつながった」というコメントをいただいています。

(4) リフォーム事業への取り組みー顧客へのアプローチ

① 4つのポイント

 人材教育の次は顧客啓発も必要ということで、顧客へのアプローチツールの1つとして「ワンフロアリフォームプラン集」をつくりました。これは定年を迎えて子どもが独立し、自宅にご夫婦で過ごす時間が長くなるといった生活スタイルが変化され、1階だけでの生活がコンパクトで暮らしやすく、今は元気だけれど将来まで見越した終の棲家を考えたいという方へのプラン提案を抜粋したものです。現場でのお客様との会話とノウハウを根拠にしたものです。プラン集では健康寿命を伸ばすための転ばぬ先のリフォームの4つのポイントは「温熱バリアフリー」「段差(上下階)バリアフリー」「外出バリアフリー」「安全で機能的な水まわり」で、ポイントを個々に考えるのではなく、この4つのポイントを連続して元気なうちこそ行うべきということを位置付けています。

② 終の棲家としての7つのプランニングポイント

さらに進んで、終の棲家としての7つのプランニングポイントを位置付けています。ここで重要なことは7つのポイントの下に書いてある理由のところです。理由を伝えないと、お客様にはなぜそうしなければいけないのかというところが分からないとなります。例えばバリアフリーリフォームでは手すりを張り巡らせると思いがちなのですが、そうすると邪魔になる手すりも生まれてきます。ですから元気なうちは最低限必要な3つの空間(玄関・脱衣室・トイレ)だけに手すりをつけて下さい、立ち座り動作には縦手すりが効果的ですと説明しています。リフォーム展開には根拠性が必要となります。7つのプラニングポイントを活かした1階リフォームの事例をプレゼンする図面では、赤文字のキャプションで生活を豊かにする工夫、青文字で将来の安全配慮・介護対応を記しています。今は元気なので今の生活が楽しくなるリフォームを行う中で、将来介護が必要になったときもこういきますよという、将来の先のメリットを提示することで、何百万の費用がかかるリフォームを今行う意味が示されており、社内研修にもよく使っているプラン事例の一つです。

③ 情報ツール

 お客様にアプローチするリフォームツールとしては、プラン集の他に、A4裏表で、リフォーム営業がお宅訪問するときや、DMに挟み込む情報ツールをシリーズ化してつくったものがあります。例えば、椅子から立ち上がるときにひざが痛いという経験は誰しもあると思いますが、それは変形性関節症というどんどん進行して、それが原因で歩けなくなるもので、特に女性の高齢者に多く、痛みを少しでも感じたら身体からのアラームです、それがこの先の住まいを考えるタイミングなので、悪化させないように今こそお宅を見直しましょうということで、裏面にリフォームの内容が書かれているツールがあります。さらに元気なうちにリフォームをするのであれば、なるべくまとめて一回で行うことをお勧めするツールがあります。リフォームには体力・気力・財力の3つが必要ですが、それを持っているときにやった方が費用的にも工期的にもメリットがあるということと、部分的なリフォームを行った後にあの時ここまでやっておけばよかったというお客様が多いということを説明するツールです。さらに、60歳はリフォーム最適年齢として、定年を迎えライフスタイルが変化するときこそ自宅を見つめなおす最適年齢ですよということを示すツールを作成しています。 在宅介護サービスの現場を通して、安全な住まいと安全な住まいを提供できる人材教育の必要性を感じていますが、弊社のリフォーム営業は1,500人しかおりません。1,500人がリフォームの知識を身に着けてもまだまだ足りないということで、お客様に直接訴える情報ツール作成まで展開しています。新しく設けました。