生活・ケアから住まいを考える

-介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に期待すること-

 

(3) サービス付き高齢者向け住宅 (サ高住)

 飯島勝也東大教授によると、フレイルとは 生活機能障害、要介護状態、死亡などに陥りやすい状態であり、身体的問題のみならず、精神心理問題、独居・経済的困窮などの社会的要因を含む概念です。生活習慣予防をしておくと、フレイル予防に繋がります。また、健康寿命の延伸のアプローチ方法として様々な意見がありますが、飯島勝也東大教授による健康長寿の三本の柱は、「栄養 (食・口腔機能)」「身体活動 (運動など)」「社会参加 (就労、余暇活動、ボランティアなど)」です。
 松岡洋子氏によると、“Ageing in Place”とは、高齢者が尊厳をもって、最後まで住み続けることです。これからの住宅双六を想定すると、今後住み続けられる住宅をどう考えるかと、そのまま住み続けた場合の家の改修の有無を考える必要が出てきます。
 英国スターリング大学では、認知症高齢者のための環境を研究していますが、誰でもが認知症になる社会の中で、集合住宅だけは絶対にやめてほしいです。例えば、タワーマンションなどは、認知症になった際に家に入れなくなるかもしれません。
 サ高住は、介護を必要とする人が増えている中で、施設代替型として出てきたものです。「高齢者の居住の安定に関する法律」(2001年、2011年改正:サービス付き高齢者向け住宅の創設) や、介護保険法 (2006年改正:地域包括ケアシステムの導入、補足給付導入) があり、こちらは大変大きなインパクトを与えました。そして住生活基本法にまとまりました。
 最近では、住宅セーフティネット制度の大きな改正が行われ、様々なシングルマザーや高齢者、外国人など、住宅入居にハンディキャップを持った人たちも住まいに住んでもらえるような仕組みができましたが、うまく機能していないのが現実です。メーカーの賃貸住宅をアクティブにするためには、住宅手当という制度は絶対に必要です。家賃とサービス付き高齢者向け住宅の費用と生活費を読みながらサ高住の立ち位置を考える必要があります。また、施設と住宅の関係をどう考えなおすかが大事になってくると考えます。
 京都大学三浦研教授のサ高住の立地特性に関する研究によると、都心に近い所には自立者が多く、郊外地域には要介護の人が多いとのことです。同じサービス付き高齢者向け住宅での分岐はなぜできるのでしょうか。サ高住の新潮流の事例として、アンダンチレジデンス (仙台市) では、レストランやカフェ、保育所など様々な施設があり、お年寄りは子供たちを見て元気になり、子供はみる機会の少なくなった老人と会う機会が増え、他人で拡大家族にすることができます。ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス (小田原市) では各部屋の独立性がありますが、普段はドアが開いている状態が続いています。採算性は悪いが、6人くらいで非常に良い空間を作り出しています。
 井上由紀子氏によると活動拠点に求められる機能は、「支援を必要とする人の発見」「相談」「健康」「社会参加」「共生意識」です。この中でも共生意識がなかなか難しく、地域プロデューサーとして生活指導員という新しいタイプの人材が必要になってくるとのことです。
本日は脱線ばかりのお話になり、お聞き苦しいところもあったようですが、雑談ができなければ大学で教えることができないのでご容赦ください。

【質疑応答・意見交換】

吉田座長:なるべく家で老後を過ごすために、早めに準備する必要があると思うのですが、何が一番大事だとお考えですか?
高橋氏:どこにどういう物件があるのか?というだけではなく、どういう生活を将来送りたいのかを考えることが大事です。また、高齢者の場合は、従来型の子供が最終的に面倒を見てくれるという概念は無くして、死後処理は義務管理でやらなければならなくなってきます。これを踏まえて、人間の後始末まで含めた相談が重要になってくると考えます。


以上