生活・ケアから住まいを考える

-介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に期待すること-

 

(2) 統計で見た平均的なライフサイクル

 人生50年、人生80年のライフスタイルというのは国交省のつくったデータなのでうまくそろっていませんが、大正時代はこんなもんだったというそれが高度経済成長の真っただ中の1961年、これが伸びてさらに2009年になると夫が引退してから夫が死亡する前と、さらに妻が生きていく時間が大変長い時間になって、これが人生100年と長くなるだろうという、あの本はどこまで本当なのかしらという疑問があります。
 ただ日本老年学会が新聞でも賑わせていましたが、老人としての生活力という昔の60歳と今の60歳では全然意味が違いますし、活動性が全く違う。老人というのは、65歳以上を日本の老年人口と呼んでいますが、むしろ75歳以上を老年人口と呼んだほうがいいです。それに合わせて人生100年時代では、定年制を伸ばし、いわゆる会社の定年後も働けるような働き方が、新型コロナのリモートワークでずいぶん分かってきました。今までの組織構造が人生100年時代の中どう考えるのかという話がありますが、ダブルインカムや兼業を認めて、ライフサイクルを直すという話が出ていますね。社会というのは一回つくった流れをなかなか変えられません。老年と生年・壮年をどういう風に考えるのかというのは大問題になります。
 社会変動を扱う古典的な著作を書いた1930年代に社会学者がいて、彼は「技術は早く変化するけれども、人間の意識が一番遅れてしか変化しない。」という学説を発表しています。日本の社会はバームクーヘン型のシステムだそうで、真ん中の古いものは壊せない。壊す仕事はイノベーターや発明家という風に言われます。破壊的イノベーターというのは壊さないといけない。日本の社会は壊れにくいため、逆に言うとどうやって上手に壊したのかについてが、経営雑誌に載っています。永遠のテーマだと思いますが、バームクーヘンのように中からいろんな新しいシステムが自然にくっついてくるけれども、中はなかなか壊れないです。そういう構造がある中での高齢者の住まいの問題、住まいと施設の環境は大変重要な論点です。